「俺かよ!?」 - 02




「寒いですね……」

「そうだな」


 本格的な冬に突入した。
 空は曇りと言うよりは雪雲に近いような白い雲が広がり、太陽は見当たらない。
 冬だ。


「手とか大丈夫か?」

「冷たいです……」


 手袋をよく落とすので手袋はしない。
 私はセーターの袖にしまっていた両手を出し、はぁーっと吐息をかけるが、もちろんそれだけでは一瞬だけしか暖まらない。
 冬は嫌いだ……。


「貸せ」

「えっ」


 山下君は私の左手を掴み、手を握られると、そのまま山下君のコートのポケットに一緒に入れられた。


「あったかいだろ?」

「あ、あったかい──ですけど……ちょっと恥ずかしいです……」

「気にすんな。寒いよりはマシだろ?」

「は、はい……」


 山下君って、さらっと恥ずかしいことするよね……。



「来週にはもう冬休みだな」

「えっ? そっ、そうですね」

「クリスマスとか空けとけよ」

「えっ? クリスマス……ですか? 何かあるんですか?」

「おまっ……マジに言ってる?」


 手を入れられたまま、歩いて数分。
 山下君は私の発言に驚いて、振り返ると、「ありえねー」と言いたげに顔を歪めている。


「えっ……変なこと言いました?」

「言ったよ……。ダメだこりゃ……」


 山下君は呆れて、その次の言葉を言おうとはしない。
 考えてみること数分、私はやっと理解した。


「あっ、もしかして……!?」

「お、やっと理解したか。お前の頭ん中、どうなってんだよ、ホント……。そうだよ、クリスマスデートってやつ。クリスマスっつったら、デートしかねぇだろ」

「そっ、そうですよね! ははは……」

「調子合わせんじゃねぇ」

「ご、ごめんなさい……」

「で? 予定はねぇんだろ?」

「だ、大丈夫だと思います。というか、きっと勝手に調整してくれると思うので……」

「ふはっ。そうだよな、あの母親と姉貴ならやりかねないな」


 彼氏にこんなにたやすく理解されてしまう、二人の単純さを呪いたくなる。


「あの姉貴とか、すげー悔しがるだろうなー」

「そうですね……。彼氏さんの予定も反故にするぐらいですから」

「マジかよ。笑うしかねぇな」


 家族として、本当に恥ずかしい母娘だと思う……。
- ナノ -