「うぜぇよ!」 - 05

 朝から騒がしいことだ……。
 もしかしたら、この調子で芦屋君は毎日、登校を共にする気ではないだろうか。


「あ、そうだ〜。奏ちゃんから聞いた? 俺のヒ・ミ・ツ」

「お前、いちいちうぜぇよ……」

「は、話しましたけど……」

「おー、そっかぁ。で? で!? 俺の恋バナ聞きたい!?」

「別に聞きたくないです」

「同意見だ」

「えっ、そんな冷めた反応!?」


 芦屋君は日を増す事にキャラ崩壊が進んでいくような気がする……。


「じゃ、勝手にしゃべらせてもらうわ」

「勝手にしゃべんのかよ……」

「毎回、疲れますね」

「俺の片想いの相手は、他校の子なんだけど〜」

「ホントにしゃべりだしましたね」

「とりあえず、適当に聞いててやろう」

「まあ、その子は湘南駅より遠い方みたいなんだけど、あの制服は翡翠学園の制服だな」

「なんかストーカーっぽいですね」

「そうだな。気持ち悪ぃな、意外と」

「可愛いとはまた違う感じなんだよな〜。性格は何となく奏ちゃんっぽいかもな」

「へー。そうなんですかー」

「すげー棒読みだな」

「もしかしたら、あれ、転校生かも! 友達いない感じだし」

「余計なお世話だ」

「毎日見かけてて、最近になってやっと少し話すようになったんだよ! 前、その子が落としたスマホを届けたついでだったんだけど、それからときたま話すようになってさぁ」

「すごいうれしそうに言いますね」

「で、やっぱり最近になって転校してきたってのが判ったんだよ!」

「ホントに当たったんですね」

「ああ。さらっと気持ち悪ぃな」

「部活はサッカー部のマネージャーやってて、すごい大変なんだって」

「へー。そろそろ疲れましたね」

「いやー、俺も手伝いに行ってあげたいわー」

「俺も飽きたわ……」

「でさー……」


 芦屋君は話し出したらすっかり止まらなくなり、私たちは学校に着くまで延々と片想いする女の子の話を聞かされる羽目になったのだった。
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