「うぜぇよ!」 - 03




「あ……」

「おっ。また会ったね、奏ちゃん」


 今日は、山下君が用事があるとのことで、先に帰ったので、一人で帰ろうと校門を抜けようとすると、ちょうど芦屋君が前を歩いていた。


 芦屋君は気配を感じてか、後ろを振り向き、私も芦屋君を視界に捉えて、お互い数秒見つめ合ってやっと声を出す。


「芦屋君、帰り?」

「そっ。奏ちゃんも? 山下は?」

「うん……山下君は用事があるからって、先に」

「ふーん。じゃあさ、一緒に帰っていい?」

「え……うん……」


 ちょうどいいタイミングだ。


 私たちは一緒に帰ることにし、しばらく歩いていったところで話しかける。


「芦屋君」

「うん?」

「この前は……ごめんなさい」

「え?」

「だから、山下君に見られたとき……。私がちゃんと拒否してたら、芦屋君もあんなことしなかったし……傷つかなかったし」

「あー。あのことかぁ……。いいよ。てか、変じゃん? 普通、ここは俺が謝るとこじゃない? 俺こそごめん」

「そ、そんな……。ホントにごめんなさい」

「うわぁ……キリないな……。だったらさ、こうしようよ? 俺のお願い、一つ聞いてくれる? それでおあいこにしよ」

「お願い?」


「そっ。いい?」

「い、いいけど」

「よし。じゃあ……」


 芦屋君はわざと焦らすようにその先を言わない。
 何を言われるのだろうとどぎまぎしていると、ようやく口を開いた。


「俺の友達でいてよ」

「へっ? 友達?」

「そっ」

「い、いいんですか? それで」

「いいのって……。今までだって、友達みたいなもんだったじゃん? それを確かなものにしようって提案してるだけだけど」

「そ、それでいいなら、いいですけど」

「そっか。よかった」

「あ……。さっき、気にしてないって言ってましたよね? じゃあ、なんで今まで出てこなかったんですか?」

「うん? それは……内緒」

「ええっ!?」

「これは俺の秘密」

「ええ……。友達になったんですから、教えて下さい!」

「ええ? じゃあ……誰にも言わない?」

「う……た、多分」

「よし、分かった。山下にだけならオッケーってことで、特別に教えてあげる」

「山下君にだけならって……。秘密ギリギリですよね?」

「細かいことは気にしなーい」
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