「──のカタチ」 - 12
「ん……」
「お。起きたか?」
目が覚めた頃には、私はベッドに寝かされていて、山下君は私の顔を覗くようにベッドの端で頬杖をついている。
「ベッドに……?」
「ん? まあな。いつまでもあんな体勢じゃ、腰やらかすだろ?」
私は声を上げることもできずに、顔を熱くさせた。
「はは。すげー乱れようだったな……。クッションなんて、お前の涙とか、涎れとかでびしょびしょだったしな」
「い、言わないで下さい……」
「あっそ。──あと、お前の汁はちゃんと処理しといたからな」
「〜っ!」
嫌でも思い出されてしまう。
オモチャであんなに激しくイったのは初めてのことだった。
「たまにはオモチャ責めもいいな」
「もう勘弁して下さい……」
「ふーん? ま、別にいいけど」
山下君は本当に意地悪だ。
私が本気で言っていないことを理解している上で、あっさり引いてしまうなんて。
「あっ、そうそう。おばさんたちなら買い物行ったから」
「えっ? そうなんですか?」
「ああ。俺らに気を遣ってくれたんだろうな」
「えっ……えぇっ!? じゃ、じゃあ、もしかしたら、あのとき下には……!」
「いなかったんじゃね? さっき、お前のライン見たら、結構前にメッセージ来てたみたいだしな」
「ええ……」
じゃあ……もしかしたら、あんなに声を我慢しなくてもよかったんじゃ……。
「スリルあって楽しかったろ?」
「た、楽しくなんかないです!」
「ははは。そうか? 俺はお前の乱れるとこ見てて、楽しかったけどな」
私はまたしても声にできない声を発し、ふとんに潜り込んだ。
「オーイ。拗ねんなよ」
「拗ねてなんかないです……!」
「拗ねてんじゃん。可愛いな」
「っ……! もうほっといて下さい!」
「そうは行かねぇって。おばさんに頼まれたし。帰ってくるまで、面倒見てやるよ」
「結構です!」
私たちは攻防戦を繰り広げて、母たちが帰ってくるまで続けていた。
からかわれたりしたけれど、私はやっと──ほんの少しだけ、山下君の彼女になれたのだと実感できた時間だった。