「──のカタチ」 - 05

「山下君って、甘いものが好きなんですか?」

「好き嫌いかって聞かれたら少し違うな……食えるには食えるぞ」

「へー。男子って甘いものが苦手って聞きますけど」

「そうか? 少なからず俺がよくつるんでるヤツらは苦手じゃねぇけど」

「そうなんですか……」


 うーん……私の情報も当てにならないな。

 そもそも、どこから得た情報かも覚えてはいないけれど。


「そんなに気になるか?」

「え?」

「他のオトコのこと」

「えっ……」


 気にかかるような言われ方……。

 これは、もしかして……。


「もしかして、嫉妬……ですか?」


 つい、口に出して訊いてしまうと、山下君は溜息を吐く。


「当たり前じゃん……。お前、ホントに自覚ないよな?」

「自覚?」

「そ。俺のだって自覚……」

「そ、そんなわけじゃ」


 いや、確かに自覚というか、実感はないけれど。

 しかし、そう言ったところで、山下君のイラつきが変わるわけではない──それどころか、さらにイライラさせてしまうだけではないか。


「ふーん? じゃあさ……あそこにあんの、何?」

「あそこ?」


 山下君が「ん」と言って指差した場所はベッドの下……。
 私の心臓に針が刺されたかのようにドクンッと強く脈打つ。


「何を言って……」

「へー? 俺、知ってるけど?」

「な、何もありません……」

「そ? じゃあ、俺が確認してやるよ」

「えっ……」


 山下君はベッドの下を覗き込んで、奥に腕を伸ばすと──昨日、届いたばかりのあの箱が……。


「これ、何?」

「なんでもないです……」

「じゃ、開けてもいいわけだよな? なんでもないんだから」


 山下君はダンボールを開けると、ニヤリと笑ってみせた。


「やっぱり。──何これ、バイブ?」

「あ……そ、それは──」

「バイブ──だよな? な?」


 山下君はパッケージから取り出して私にそれを突き出した。
 それは、確かに私が先日頼んだバイブだった……。


「お前な……男がエロ本隠すようなことしてんじゃねぇよ」

「だ、だって! いつものようにクローゼットに隠そうとしたら、お姉ちゃんが急に……!」

「ってことは……お前、クローゼットにもあるんだな。昔のが」

「あっ……!」


 さらに墓穴を掘ってしまったことに気がついてしまった私は口を開けて、ショックを受けるしかない。
 そんな私の反応に、山下君は「ぶはっ」と吹き出して笑う。
- ナノ -