「──のカタチ」 - 03

 爽やかな土曜日を迎え、午後からは友達の一人が急用ができてしまったため、午前中だけ遊べる遊んで家に戻った。


 楽しかったなぁ……。

 帰ったら、何しようかなぁ。


「ただいまー」


 リビングへ向かうと、その扉の前からやけに騒がしいなとは思いつつ、どうせまた母と姉がはしゃいでいるのだろうと気にも留めずに入った。


「ただいま。──って、え?」

「あら、お帰り」

「あー、奏! おかえり!」

「よっ」


 ソファには母と姉──父は休日出勤だ──、そして、山下君の姿があった。


「えっ!? なっ、なんで!」

「それがねー。萌も彼氏とデートだって言うの忘れててねー。つい買い物しすぎちゃったのよ! そしたら、偶然。偶然よ? 山下君が通りかかってくれて、荷物持ってくれたのよー。もう、助かっちゃったわ!」

「いえいえ。お構いなく」

「私もびっくり! 帰ったら、山下君がいるんだもんー」

「俺、すぐに帰るっつったんだけど、昼ごちそうしてくれるって言うし……」

「は、はあ……」


 なんで、よりにもよって通りかかっちゃったんですか……。


 もちろん、そんなことは予期できるはずもないけれど。


「奏ももうすぐ帰ってくるって聞いてたし! だから、待っててもらってたのよー」

「そ、そう……」と頷きかけて、はた、と止まる。


 そう言えば、まさかとは思うが、部屋に入れていたりしないだろうか。
 つい昨日届いたばかりのあの箱が山下君に見つかったら、あとでからかわれるかもしれない。


「まさか……部屋に入ってないですよね?」

「あら、何かまずかった? 山下君が奏の部屋見てみたいって言うから、ちょっと見せたけど」


 ちょっ……お母さん!?


 声に出せない叫びを心中で上げながら、山下君を見るとテレビを観ているだけだ。

 これは……もしかしたら、セーフかもしれない?


「そうだ。奏、ケーキあるから、部屋で食べたら? 山下君と一緒に」

「えっ!?」


 確かに時間は俗におやつの時間と呼ばれる15時。
 しかし、自分の家で──ましてや、自分の部屋で、いきなり二人きりというのは、予想していなかった展開。


「あら、何か不都合が? 山下君はいいわよね?」

「俺は大丈夫です」

「ならいいじゃない。あとで持ってくから、先に行ってて」

「う、うん……ありがとう」
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