「──のカタチ」 - 02

 家に帰って、もやもやした気持ちは晴れない。


 そんなとき、久しぶりにオモチャの販売されているサイトを何の気なしに眺めていた。
 もちろん、これで何かが変わるわけがない。
 けれど、何かでこの気持ちを紛らわそうとしたかっただけ。


「あ……」


 そして、目に入ったのはバイブだった……。
 それなりに太くて長いそれは、どことなく山下君のモノに似ていた気がして。


 今思えば、あの痛みだって、サイズに合わないから痛かっただけであって、もしかしたら、また最後までする機会があれば、もう少しは痛みもなく、山下君もやりやすいのでは……。


 そう思うといてもたってもいられず、私は注文ボタンを押していた。


「ああ……やっちゃった……」


 久しぶりにオモチャを買ってしまった……そんな罪悪感に苛まれ、私はベッドの上でゴロゴロとひたすらに痛みから耐えるようにのたうち回った。


「あとは土曜日……。何着ていこっかな……」


 最近は以前に感じていたコンプレックスなどからはすっかり解放されて、姉とよく買い物に行くようになった。
 そのおかげで、服やアクセサリーの種類も増えつつあった。


 その中でどんな服を合わせようか、こんなアクセサリーがいいかなど、おしゃれするのも楽しくなっていって……。


 そういう意味では、山下君と関わるようになってからいいことはあった気もする。
 少しエッチが激しいのは悩みどころだけど……。


 そんなエッチの最中、山下君が耳元で優しく「奏」と呼んでくれるあの瞬間だけが、やっと実感を得られるんだ。
 他では基本、お前呼ばわれだし……。


 うーん……もっと呼んでほしいなんて、言えないし……。


 そんなわがまま言えないし、恥ずかしいし……。
 そんなことばかり考えているから、私の中での実感が形として得られないのかもしれない……。
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