「私の秘密」 - 07

「あ、ありがとうございます……!」


 笑いのネタにされずに済んだことが分かり、再び深々と頭を下げる。
 ──だが、安心するのは早かった。


「その代わり、ヤラせろよ」

「えっ?」


 突如、降ってきた言葉に咄嗟に顔を上げると、山下君はふざけた様子も見せず、至って真剣そのものの表情だった。


 今まで言われたことがなかったその台詞に、顔から火が吹くように一気に熱を持つ。


「え、あ、あの……」

「地味な女って意外とエロいとか、よく聞くだろ? それってホントなのか……確認させろよ」


 そう言って、山下君の手が私の胸へ伸び、やわやわと軽く揉む。


「えっ! あ、あのっ、待って──」

「待たねぇ。──何、バラされてもいいの? あの地味な坂下がホントは大人のオモチャが大好きって」

「あ、う……っ」


 バラされたくない。
 それだけが今の私の脳内を支配し、抵抗という選択肢を消失させた。


「お願い、します……。言わないでください……っ」


 悔しい。

 この秘密がバレなければ、こんな我慢をしなくても済んだはずなのに。


 抵抗しないことを誓うように、体を固くした。


「簡単だな……」


 揉みほぐす手が再び動く。
 決して脅すように強く揉んでいるわけではないが、弱みを握られているせいか、とても怖い。


「ん……」


 怖くて、怖くて……逃げ出したい。
 しかし、鎖で縛りつけられているように体が動けないし、たとえ動けたとしても、秘密が明るみに出ると考えれば、できそうもない。


「ほら、どうした。もっと感じてみろよ」

「っ……いやぁ……」


 無理に決まっている。
 こんな気持ちでは、感じることなんてできるわけがない。


 か細い声で拒否すると、山下君は「チッ」と舌打ちを打つ。
 恐怖で、たったそれだけで体が震える。


「じゃあ、下ならいいのかよ?」


 再び山下君の手がスカートの中へ消えていき、下着を下ろされてしまう。
 湿っていた布がなくなった代わりに、スカートから入り込んでくる爽やかな風が反対に気持ち悪く感じられる。


「い、いやぁ!」

「嫌、じゃねぇだろ」


 そして、山下君の指が入り、オモチャとは違う異物感にさらに恐怖が芽生える。


「いや、いやぁ……っ」


 怖い……。
 ただそれだけしか思えず、目から涙が零れ出てくる。
 しかし、山下君はお構いなしに指を動かし──体の奥から痛みが走った。


「痛っ……」

「はぁ?」