「好きです」 - 05




 電車に揺られて15分。
 明星駅を降りて、5分ぐらいしたところで、あのホテルに入る。
 今回はフリなんかではなくて、本当のカップルとして……。


「んじゃ。まずはシャワーか……。一緒に入るか?」

「えっ!? いっ、いいです!」

「そんな恥ずかしがることねぇだろ。これから、もっとすげーのに」

「そっ、そんなこと言わなくていいです!」

「ははっ、悪ぃ悪ぃ」

「もう……遊ばないで下さい……っ」


 余裕な山下君がうらやましい……。


 山下君の後に私もシャワーを浴び、ガウンで身を包む。


「はぁ……っ、自分で言っといてなんだけど、すごい緊張してる……」


 脱衣所の鏡の前で停止する。
 だって、この脱衣所を一歩でも出てしまったら、きっとすぐに始まってしまう。
 まずはここでしっかりと心の準備を……。


「い、痛いとか聞くけど、大丈夫かな……」


 いくら慣らされたと言っても、ローターとか指とか舌とかで……。
 バイブなんて入れたことがないから、余計に不安になる。


 ああ、バイブ試してみればよかったぁ……。

 なんて、どうでもいい後悔なんてしてしまう。


「うぅ……っ」


 もう、山下君、待ってくれてるよね……。

 ああ、もうここまで来ちゃったし……行くしかない!


 なるようになれ! と私は部屋に戻った。


「お、お待たせしました……」


 思い切ったのはよかったものの、やっぱりおそるおそる声をかけてみると、山下君はベッドの端に座っている。
 しかも、出てきたときとは違って、ガウンから肌もチラ見せして。


「お。遅いぞ」

「ご、ごめんなさい……。でも、なんでちょっとはだけてるんですか?」

「あ? 気のせいだろ」

「い……いやいや、気のせいじゃないですってば!」

「何? 俺の体、そんなに嫌か?」

「い、いやとかそうじゃなくて……きゃっ」


 グイッと腕を引き寄せられ、山下君の膝の上に乗る形になる。
 顔も近いわ、体も近いわで……もう、頭の中がぐちゃぐちゃだ。


「山下く……」

「ん? ほら、触ってみろよ」

「えぇ……っ」


 今度は手を掴まれて山下君の肌まで誘導させられると、すごい固くて……。


「す、すごいですね……」

「別に普通だろ」


 そんなことはない。
 山下君は一体、いつ鍛えているのだろうと思うほど、体の筋や線がしっかりしていて、固くて……言葉足らずだけどすごい。

 私はこんな体に今まで、そしてこれからも抱かれ続けるんだ……。