「好きです」 - 04

「はっ……だからしとくんだよ。これなら、あっちだってやめるだろ?」

「だ、大丈夫ですから……っ」

「どうだかな?」

「う……っ」

「ふはっ、やっぱおもしれぇな、お前」

「きゃっ」


 山下君の手が胸に当たる。
 やがてその手は、やわやわと揉みしだく……。


「んっ……」

「マジ、お前の胸、好み……」

「や……っ、恥ずかしい……っ」

「そうか? でも、今さらだろ」

「え? こ、ここでするんですか……?」

「嫌か?」

「い、いや……というか……」

「あっそ……。ま、お前は処女だし……もう少しマシなとこでするか」


「よっ」と私を抱き寄せながら一緒に起き上がり、手を引かれる。


「あ、あの……どこに……?」

「ん? そうだな……逆にどこがいい?」


 ぴた、と屋上の扉の前で立ち止まったかと思えば、突然にそんなことを訊かれて困惑する。


「ど、どこって……えーと……」

「ほら、好きに言えよ」

「えぇ……急に言われても……」


 そんなこと、突然に言われても困るよぉ……。


 悩んで、悩んで……悩み抜いた結果、あの場所を思い出す。


「じゃあ……この前のホテル……とか、ダメですか……?」

「は? ホテル? ホテルなら、別に他にもあるだろ」

「だ、だって……あのあとに山下君のことが好きって気づいて……私には、特別な場所です……」


 確かに、ホテルなら近くにいくらでもある。
 けれど、あの場所だからこそ、こだわりがある。


 ぎゅぅ──と山下君の手を握り返すと、山下君はそれに握り返してくれた。


「そんなに言うなら……。ま、初めて彼女になった奏のわがままだしな」

「あ、ありがとうございます……」


 いちいちうれしいことを言ってくれる……。

 やっぱり、山下君のことが好きだ……。


「ってことで、学校抜け出すぞ」

「は、はい……っ」


 私はその日、初めて学校を抜け出した。
 大好きな山下君に手を繋がれて。
- ナノ -