「好きです」 - 03

 にやりと笑ってみせた山下君。

 極めつけには、「好きだ」と耳元で囁かれてしまった。


「え、えぇっ……!」

「そんな、驚くことかよ……」

「だ、だって、今までそんなこと、微塵も感じさせなかったじゃないですか……っ」

「当たり前だろ、隠してたんだから。つか、お前も判りにくかったぞ」

「そ、そうですか……?」


 隠していたわけでもなかったんだけど……。


「ま、ってことで、もう手放す気ねぇからな」

「え?」

「お前は、これからも俺だけのオモチャなんだから」

「お、オモチャって……。もう少し、マシな言い方ありませんか?」

「んだよ。じゃあ、彼女に昇格させてやるよ」

「すごい上から目線ですね……」

「文句言うな」


 今度は後頭部を押しつけられ、山下君の唇に触れる。
 けれど、この前のような冷たい唇ではなくて、少し熱を持ったキスだった……。


「は……。お前の唇、すげー熱いな……」

「山下君のは、いつもより熱いんですね……」

「当たり前だろ……。いつものとは違ぇんだから」


 見つめ合って、キスして──また、それを繰り返して、まるでお互いの気持ちを確かめ合うみたいに、何回も何回も唇を重ねた。


「ん、ふ……っ」

「は……っ、やべ……」

「んっ」


 キスが終わったかと思えば、山下君は私の首筋に噛みつく勢いで来て、吸い付いて落としていく。


「忘れんなよ……。お前は俺のなんだから……」

「は、はい……」


 か、カッコよすぎます……。

 とっくに、私は山下君のものなのに──なんて言わせてくれる隙も与えてくれない。


「奏……」

「え……っ」

「俺、お前の名前、好き……」

「えぇ……っ」

「だから、お前も言えるようになれよな。俺の名前。──つーか、俺の名前、覚えてるのか?」

「お、覚えてます……! っ、……真宙……君、ですよね……?」

「そっ、真宙……。今度こそは声を大にして言えよ。今回は許してやる……」


 いちいち上から目線なのが気になるんですけど……。


「な、なんでそんなに上から目線なんですか……?」

「あ? んなの、俺が独占欲強ぇからに決まってんだろうが」

「宣言しちゃうんですね、そこ……」

「宣言しといたほうがお前が覚えそうだろ。お前、淫乱だからそこら辺の男引っかけるし」

「ひ、ひどいです……っ」
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