「好きです」 - 02

「山下君……!?」


 急にどうしたの!?


 突然のことが、頭の中でぐるぐると黒い渦が渦巻いている。


「ど、どうしたんですか……?」


 戸惑う前に告白しなきゃ──けれど、やっぱりこんな状態で告白なんてできない。


「あ? ……黙ってろ」

「えぇ……」


 まさかの黙ってろ……。

 こんなときに黙っていろなんて、ひどすぎる。


 ドキン──ドキン──ドキン──ドキン──ドキン──


 さっきの心音がさらに速くなってる……。

 なのに、なんだか心地がいい……。


 すっかり固くなっていた体が芯から解れていくように、私は山下君の胸に顔を擦りつけた。
 そうしたら、ドキン──ドキン──と規則正しいリズムが聞こえてくる。


 山下君も……ドキドキ言ってる……。


「ふふっ」

「何、笑ってんだよ」

「ごめんなさい……。山下君って、いつもクールで冷静な感じだから、胸の音がすごいなって思ったら……ふふ」

「うるせー。お前だって、心臓バクバク言ってんじゃねぇか」


 それはそうだ。


 だって──


「当たり前じゃないですか……。山下君……好きです……」

「あっそ……。って、は?」


 私の背中に置いていた手が離れた。

 私は山下君が一体、どんな表情をしているのかが気になって顔を上げてみると、驚いている好きな人の顔があった。


「え?」

「え? じゃねぇよ。今、なんつった?」

「え……えぇっ!?」


 ボッ──そんな効果音が似合うぐらい、顔面が一気に熱を持った。


「もっ、もう一回言うんですか!?」

「だって、マジに聞こえなかったし。──で、なんつった?」

「え、えぇ……。あ、あの──えっと……す、好きです……って、言いました……」


 観念して改めて告白すると、山下君の顔が赤くなっていって……最終的には耳まで真っ赤になる山下君に、つい笑ってしまう。


「何、笑ってんだよ!」

「ふふ……。山下君の耳、真っ赤っかですよ……っ」

「うるせぇなぁ! 仕方ねえだろ……俺だって……」

「え?」


 チュッ──山下君が、それはそれはとても短いキスを唇に落とした。
 とんでもない不意打ちに、私も笑いが止まって、また頬が火照った。


「ははっ、これでおあいこな」

「え、えっ……えぇっ!?」
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