「俺と付き合ってよ」 - 04
そう言う私の手は震えていて、嘘だと見抜かれるのは仕方のないことだった。
けれども、山下君は何もせずに私の手を離した。
「山下──く……」
「芦屋。お前もいい加減にしろよ。俺だって優しくねぇんだから。次あったら、学校に報告するからな」
「あ、ああ……」
「坂下。行くぞ」
「はっ、はい……っ」
私の腕を引っ張り上げ、その力を利用して立ち上がると、山下君はそのまま私の手を引いて屋上を後にした。
屋上にいたはずのカップルはなく、扉を閉めるよりも前に私は心配で芦屋君を見ると、ひどく傷ついた顔をしていた。
その表情を見て、私の良心がドクンと苦しく締めつけられた。
「あの……山下君……ごめんなさい……」
「お前は何も悪くねぇんだろ? もともと、お前って濡らしやすい体質だし……」
それを言われると返答できる言葉を持ち合わせていない。
確かにその通りで、実際、山下君以外の人が山下君より私の秘密に気がついて、今のような関係になっても……。
──しかし、そんなことは考えたくない。
今では、紛れもなく山下君のことが好きなのだから……。
「ホントにごめんなさい……」
「もういいっての」
私の左手を包む山下君の手は今日も冷たくて。
今、触れているこの手は山下君のものなのだと確信できるこの瞬間が、何よりもうれしくて。
だからこそ、離したくない──離してほしくない──離れないでほしい……。
その想いが、山下君の手を握らせる勇気をくれる。
今はそんな勇気しかないが、いつか、きっと、私の想いをちゃんと山下君に伝える勇気が持てたら……。
山下君とともに自分たちの教室がある階へ到着したその瞬間、授業の始まりを告げる鐘が鳴り響いた。
「もうこんな時間かよ……」
「次は岩佐先生でしたよね……」
時間に厳しい歴史の担当教師だ。
「そうだった……」
「あっ」
近くにあった空き教室に引きずり込まれ、山下君は鍵を閉めた。
「山下、く……」
「黙れ」
「んっ……」
山下君のほんのり暖かい唇が押しつけられた……。
けれども、山下君は何もせずに私の手を離した。
「山下──く……」
「芦屋。お前もいい加減にしろよ。俺だって優しくねぇんだから。次あったら、学校に報告するからな」
「あ、ああ……」
「坂下。行くぞ」
「はっ、はい……っ」
私の腕を引っ張り上げ、その力を利用して立ち上がると、山下君はそのまま私の手を引いて屋上を後にした。
屋上にいたはずのカップルはなく、扉を閉めるよりも前に私は心配で芦屋君を見ると、ひどく傷ついた顔をしていた。
その表情を見て、私の良心がドクンと苦しく締めつけられた。
「あの……山下君……ごめんなさい……」
「お前は何も悪くねぇんだろ? もともと、お前って濡らしやすい体質だし……」
それを言われると返答できる言葉を持ち合わせていない。
確かにその通りで、実際、山下君以外の人が山下君より私の秘密に気がついて、今のような関係になっても……。
──しかし、そんなことは考えたくない。
今では、紛れもなく山下君のことが好きなのだから……。
「ホントにごめんなさい……」
「もういいっての」
私の左手を包む山下君の手は今日も冷たくて。
今、触れているこの手は山下君のものなのだと確信できるこの瞬間が、何よりもうれしくて。
だからこそ、離したくない──離してほしくない──離れないでほしい……。
その想いが、山下君の手を握らせる勇気をくれる。
今はそんな勇気しかないが、いつか、きっと、私の想いをちゃんと山下君に伝える勇気が持てたら……。
山下君とともに自分たちの教室がある階へ到着したその瞬間、授業の始まりを告げる鐘が鳴り響いた。
「もうこんな時間かよ……」
「次は岩佐先生でしたよね……」
時間に厳しい歴史の担当教師だ。
「そうだった……」
「あっ」
近くにあった空き教室に引きずり込まれ、山下君は鍵を閉めた。
「山下、く……」
「黙れ」
「んっ……」
山下君のほんのり暖かい唇が押しつけられた……。