「俺と付き合ってよ」 - 02

 芦屋君の顔が接近してくる。
 しかし、私はすぐに振り払った。


「やめてください……っ。私は、芦屋君の気持ちに答えられない……!」

「別に答えてくれなくてもいいよ。俺が勝手に好きなだけ」

「いや……っ」


 キスなんてされたくない……!

 だって、まだ山下君の熱も、唇の感触も忘れたくない……!


「──ラッキー。誰もいねぇじゃん」


 バンッと扉が開かれると、男子の声が聞こえてきた。


「ホントに? 誰もいない?」


 そして、女子の声も続く。
 どうやら、カップルのようだ。


「あっぶねー……」


 扉の近くにいた私たち、芦屋君が私を引っ張って小屋の左側に回ったのだ。


「ちょ、芦屋君……っ、離して……!」

「いやいや。今、出てったらいろいろヤバいでしょ」

「何がヤバいんですか? 別に悪いことしてるわけじゃ──」

「あっ……! ちょっとぉ……待って……っ、あぁんっ」


 え……?

 思わず、芦屋君の顔を見ると、芦屋君も驚いた様子で目を見開いていた。


「あぁんっ、そこっ、気持ちぃ……あぁっ」

「ありゃー、始まっちゃったな……」

「ど──どうしてくれるんですか! 余計、出るに出られなくなっちゃったじゃないですか!」


 もちろん、小声で怒っている。


「いやー、まさか、こんなすぐに始まると思わなくって……」

「もう、どうするんですかぁ……」


 私が焦っている間にも、カップルの盛り上がりはすでに最高潮。
 こんなタイミングで出てしまったら、もう気まずいことこの上ない。


「あっあっあっ! 気持ちぃっ、気持ちいいよぉっ!」

「盛り上がんの、早ぇなぁ……。こりゃ、早く出られそうだね。──ん?」


 芦屋君が私を見下ろした。
 その目線に気がついて、顔が熱くなっていく感じがした。

 私の息遣いは荒くて、つい体が動いてしまっていて……。


「何? エッチな声聞いてたら、したくなってきちゃった?」

「ち、違……っ──んんっ」


 芦屋君の手が私の胸を掴んで優しく揉みほぐす……。


「嘘はダメだよ、奏ちゃん。さっきまで俺の体に自分の体、擦りつけてきたくせに……。ホント、奏ちゃんって淫乱だねぇ」
- ナノ -