08戻 れ な い 。
凌君は私の唇を奪った。
乱暴に口を押しつけてきて、何度も顔を交差させる。
「んん! んむ……、ぅぅん……っ」
胸板に腕を突っぱねてみても、凌君のキスは止まらない。
こんなことはせめて卒業してからにしようと私は思っていたのに、どうして凌君はそうさせてくれないんだろう。
でも、嬉しい……。
また凌君とキスができるとは思ってもみなかった。
だからこそ、いつの間にか抵抗するために伸ばしていた腕も、彼に縋るようにシャツを握っていた。
「は、あ……あァ……ッ」
以前よりもうまくなったキスに骨抜きにされた私は立っていられずにくずおれてしまいそうになるが、凌君が私の腰をがっしりと支えてくれているおかげでそうならずに済む。
やがて、糸を引きながら、唇が離れていく中で凌君を見据える。
二人で見つめ合ってしばらくし
て、凌君が私をお姫様抱っこしてベッドまで運ぶと、優しく仰向けに置く。
後から凌君も私に覆い被さって、ネクタイを緩めてボタンを三つまで空ける。
「成瀬──」
「俺のこと、凌って呼んでください……。オナってるときはそうなんでしょ?」
「だ、だめ……」
「どうしてですか? 俺だって今日、綾菜先生って呼んであげたでしょ?」
「ダメなものはダメだよ……」
だって呼んでしまえば、気持ちを抑えられない。
それこそもう、教師と生徒に戻れないと分かるから。
しかし、凌君は私のことを耳元で呼びながら、息を吹きかけたり舐めたりしてくる。
「アっ、あぅッ、アア……っ」
「綾菜先生……」
敏感になっていく耳が凌君の息や声だけを拾って、私を刺激する。
「や、ァうっ、もうやめっ──」
「先生、お願いです……俺のこと、凌って呼んで……」
そんなの、無理。
気持ちがぐらぐらと揺れる。
でも、その揺れはより一層ひどくなるものとなった。
「綾菜先生、好きです……」