05秘めたる可能性
「おはよー、綾ちゃん!」
「おはよ、瀬戸君」
優希さんと別れて、一週間。
ちゃんと告白すると言ったのに、凌君に侮蔑の目で見られるのではないか、嫌われるのではないのかと竦んでしまう、憂鬱な日々を送っていた。
「ふぁあああぁ……はよ……」
肩を落とす私の心とは裏腹に、ある眠そうな低い声を聞いた心臓がドキンッと高鳴る。
「はよ。デケェ欠伸だな、オイ」
「あぁ……なんか、寝らんなくて……。あ、綾菜先生、おはようございます」
「え? ──あ、ああ、おはよう、成瀬君」
え?
今……綾菜先生って呼んだ?
聞き間違いかと訊ねたいが、追及して変に思われるのは困るので、もちろん訊かないが、やはりそれでも気になる。
「あれ? お前、綾ちゃんのこと、名前で呼んでたっけ?」
「ん? まあ……たまには、いいかもってな」
チラリ、凌君がこちらに一瞥くれた気がして、小さく脈打つ。
そして、瀬戸君のナイスアシストへの感謝、やっぱり空耳でなかったのだと次々と感情が押し寄せてきて、何だか複雑な気持ちに襲われる。
「ふーん……。そんなんだと、三日月がヤキモチ妬くぞ?」
「あー……。三日月となら、別れた」
「はぁ!?」
「えっ!?」
私と瀬戸君の驚きの声が重なる。
思わず反応してしまったと後悔するが、誰もが羨む美男美女カップルが急に破局したと聞けば驚くに違いないだろうと思い至って、平静を装う。
「何で別れたんだよ?」
「別にいいだろ」