09違(たが)う気持ち
「──お前ら、何してるんだ」
え……?
聞き間違いか──否。
「げっ、生徒会長……!?」
我に返った男子生徒たちは一斉に私の体から離れ、生徒会長──凌君を見て動きを止めた。
凌、君……。
「お前ら、何してた?」
「えっ……いや、その……、っ」
「まさか、何もしてねーなんて言わないな?」
「う、そ、それ、はっ……」
凌君の放つ、一つ一つの言葉に含まれた負の感情がただならぬ空気を漂わせる。
それを敏感に感じ取った生徒たちは言い訳らしい言い訳も思いつかないまま、懸命に口を動かすが、まともに話せない。
「誰がどう見たって、輪姦してたよな」
誰かが力なく頷いた──次の瞬間だった。
「お前ら、何したのか判ってんのか!? オイ!」
ヒィと喉を詰まらせて、怯える。
凌君はすごい剣幕で生徒を叱責して、とうとう胸倉を掴んで大きく揺らしてあれやこれやとまくし立てる。
失意の中で衝撃的なものを見た私は、瞬時に正気を取り戻して凌君を止める。
「や、やめてっ、成瀬君!」
「放せ!」
「成瀬君!」
すっかり熱くなった彼の名前を呼ぶと、力をなくしたように相手を解放した。
この隙にと私は男子生徒らを見回す。
「さあ、あなたたち。今なら許してあげるから、早く帰りなさい」
相手側はお互いの顔を見つめて、一目散に逃げ去っていった。
彼らがいなくなったことを確認し、凌君に目を向ける。
彼は未だに座り込んでいた。
「成瀬君」
凌君はばっと私を見て、ほっとしたような顔を見せ──すぐに表情が読み取れない複雑なものを作る。
「さっきはありがとう……でも、胸倉を掴むのはダメだよ」
だって、勘違いしてしまう。
もしかして、凌君は私がレイプされているところを見て正気を失ってしまったのではないのか、と。
凌君は普段は冷静だ、いくら女性が乱暴されているからと言って、暴力に走るとは想像できない。
実際、私が最上先生に言い寄られているときは淡々と助けてくれたわけだ。
なのになぜ、今回に限って……。
そんなことないって言い聞かせなきゃって、思うのに。