08淡い期待

「先生さぁ、声出してくれないと。ね?」


 ふるふると頭を振る。
 拒否するためのアクションではなく、単純に声を出せないのが現状だ。


 すると、上に乗る男子生徒はにやっと口角を上げる。
 私は瞬間に悪寒を覚え、額にじんわりと汗が噴き出すのを感じた。


「じゃあ、無理矢理にでも出させてあげる」


 その言葉を皮切りに、私を押さえつけていた他の4人がそれぞれ体をまさぐり始める。
 腕を担当していた2人は脇や顔を舐め、足を掴んでいた2人がストッキングを破ってスカートの中へ手を伸ばす。


「っ……!?」


 口を開いたものの、声にならない声が虚しく放出される。


 嘘でしょ、エスカレートするつもり……?


 このままではこの子たちの高校生活はもちろんのこと、私の貞操までも危ぶまれる。


 そう思っているのに、やはり恐怖で抵抗ができない。
 私1人では何もできない……。


 お願い、誰か来て……っ!


「っ!」


 胸の先端が生暖かいざらついたものが纏う。
 やがて、それが胸を揺さぶる。
 さらには、下着の中に入り込んだ指が膣に侵入してくる。
 しかも、2本の指が。


 拒絶反応だろうか、ぞわぞわした感覚が身体を貫いて、鳥肌が立つ。


 お願い、こんなのいや……いや!


 なのに、体は動いてくれない。
 萎縮するばかりで、身動き一つ取れずにされるがまま。


 本当に自分が無力で──


「……っ」


 つーと静かに流れる涙。
 呆然と天井を眺め、歪んでいく視界には歪んだ世界しか映らない。


 もう、誰か来てくれるなんていう期待が泡になってしまいそうだ。

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