04不安の払拭
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数分の間、私は体の震えが収まらずに必死に自分を抱きしめて押さえ込もうとしたわけだけど、震えの原因が決して寒さなのではないのだから、無意味だとしてもそうせずにはいられなかった。
あの二人の声を掻き消したくて、掻き消したくて、たまらなかったのだろうか。
「綾ちゃん、あの二人はいなくなったよ」
「そ、そう……。ありがとう」
震える声で礼を告げる。
「ごめんね、瀬戸君」
落ち着いてきたとは言え、声を出すのが苦しい。
でも、瀬戸君のおかげで私はこうして凌君たちに見つからずに済んだ。
言わなくてはならないことは言わなければ。
「別にいいよ。綾ちゃんが辛そうなの、見てらんなかっただけだから。それだけだよ」
「そっか……」
さすがは凌君と同じぐらいにモテる子だ。
女の子の扱いが上手い。
こういうときは、瀬戸君に見つかって好機だったと言えよう。
「あのさ、綾ちゃん」
「ん?」
彼を見ると、微妙な顔でこちらを見る。
表情は読み取れないが。
しばらく瀬戸君は何かに逡巡するように目を泳がせていたけど、結局は頭を振って何でもないと言う。
瀬戸君はそれから何事もなかったようにいつもの明るい調子で、どうするのと訊いてくる。
「私、施錠の当番だから、このプールの鍵閉めたら帰るよ」
「じゃあ、もう大丈夫かな。俺、生徒だから、下校時間過ぎてたらヤバイから」
「あっ、そうだね。ホントにありがとう」
「ううん。何か困ったら、言ってね」
心強い言葉を胸に貰い受け、瀬戸君と別れたのだった。
瀬戸君が来てどうなるかと思ったけど、とりあえずは助かった結果となったのだから、大丈夫だろう。