04日々の成果

 ──それから、俺たちの特訓はよくも悪くも順調に進み、7月が過ぎた。


「で? 三日月は上手くなったのかよ?」


 水泳の時間が始まろうというとき、カズが嫌みを含む笑顔を三日月に向ける。


「だいぶ、上手くなってきたんじゃね?」

「えへへ、まあね」


 三日月はビート板の補助なしはもちろん、俺の助けも必要もなくなるほどに上達していた。


「試しにどこまで泳げるか、確かめてみるか。あとで先生に相談しようか?」

「うん」


 気持ちがいいほどの即答だった。
 きっとそう言われるんだと覚悟していたんだろう。


 まだ、端まで行くのは難しいだろう。
 中間地点を越えたら、合格とするか。


「じゃあ、決まりだな」

「授業、始めるぞー」


 話がついた瞬間にタイミングよく体育教師が姿を現した。
 俺はすかさず挙手して、相談を持ちかける。


「先生、ちょっといいですか?」

「ん。何だ、成瀬?」

「今日は水泳のテストをしませんか? どこまで泳げるか」

「え? いや……まだ、日数はあるしなぁ……」

「お願いします、先生」


 三日月は頭を下げて、懇願する。
 すると、先生は低く唸って首を捻る。


「──まあ、いいか。残りの授業は自由時間に使うことにしよう」

「ありがとうございます!」


 俺たちの熱心が伝わったか否かは判らないけど、先生はしぶしぶ首を縦に振ってくれた。


「よーし、みんな。聞いたな? 今日はテストするぞ」

 ブーイングが飛び交う──かと思ったが、話をしかと聞いていたらしいクラスメイトたちは何一つ文句は言わなかった。

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