11幕が上がる…
とあるの日の放課後。
その日は明日がいい天気になると言われている前兆、眼いっぱいに広がる空が夕陽の強い光によって辺りはオレンジ色に染まっていた。
また、珍しく生徒会の仕事が少なく、いつもよりは早く帰宅できそうな、そんな日だった。
「お、凌! 今日は早いんだな?」
「ん、カズ……。お前こそ、今日は早いじゃん、帰りが」
「まあな。今日は夕飯当番だから、早く帰んなきゃなんねーんだよ」
「そうなのか」
カズの家は親が共働きで、おまけにともに重役だから帰りも遅い。
だから、カズとお姉さんの由芽さん、弟の心也君の3人で家事する当番を決めている。
「お、そうだ。また、綾ちゃんの動画、見してくれよ」
「はあ? ……まあ、いいけど」
カズはすっかりあの動画の虜になってしまったらしく、ことあるごとに動画の閲覧を要求していた。
「サンキュー。はー、やっぱ最高だな、それ」
ご満悦そうに言いながら、スマホを返す。
「でもさ、ずっと見てると、いい加減ヤりたくなるよなあ」
「まあな……」
カズの言う通りだ。
おかずにしてかれこれ、1週間は経ったか。
4日を過ぎてから、動画の細部に眼が行き始めていた。
指が胸などの肌に食い込んでいると、どれくらい柔らかいか……とか。
そう言った欲が溢れだして、いくら果てても眠れなかった日もあった。
「じゃあ俺、帰るわ」
「ん? ああ、じゃあな」
カズと別れ、生徒会室に戻る。
「会長、お帰りなさい」
「ああ」
「じゃあ、下校時間なんで、僕たちは帰りますね」
「ああ、気をつけてな」
他の会員が帰ってから、俺も大体仕事が終わったから、机を片付け始める。
「つっ……!?」
すると、指に微かな痛みを覚え、見ると細い傷跡から血が滲み出ていた。
多分、紙で切ってしまったんだろう。
ツいてねー……。
生徒会室の扉を施錠し、足取り重く保健室に向かう。