07天使に躙り寄る悪魔

 俺は再び仕事に追われ、昨日と同じ時刻にやっと切り上げることができた。


 何でこんなに仕事が多いんだよ。
 愚痴っても仕方がないのに、それでも言わずにはいられない。
 こうも毎日、長時間仕事してたら、疲れで倒れるっての。


 でもそんな負の感情を打ち消す。
 保健室が見えてきたから。


 どぎまぎしながらその部屋を通る──が、電気がついているだけで赤城先生は不在だった。


 よかった、いなくて……。
 胸を撫で下ろし、職員室につながる階段を上──ろうとしたときだった。


「止めてください」


 ん?


 さっきの声……赤城先生だったか?


 耳を澄まして声の出所を探っていくと、保健室に近い放送室の隣にある小会議室にぼんやりと明かりがついている。
 小会議室は生徒専用の会議室なので、こんな時間に使用しているなんてあり得ないし、そもそも下校時間はとっくに過ぎているので、生徒が残っている可能性は限りなく低い。


 ということは、やっぱり教師か?


 部屋を覗いてみる。
 思った通り室内には生徒ではなく、教師の姿があった。
 遠いから誰かの判別はできないが。


 情報が足りないので、聞き耳を立てる。


「いいでしょう? 減るものじゃあないんですし」


 この男の声は確か、世界史の担当している最上だ。
 ジェントルマンみたいな態度だが、女に関しての噂をちょくちょく聞く、嫌な教師だったはず。


「そういう問題じゃあありません……」


 もう一人、女の声は案の定、赤城先生だ。


 影がほぼ重なっているということは、二人はかなり密着している。
 それでいて赤城先生が嫌がっているなら、セクハラか?


 全く、こういう教師がいるなら追い出してほしい。


 俺はやれやれと思いながらスマホについているカメラのレンズを室内に向け、わざとシャッター音を立てて撮影した。
 すると、音に反応した2人が出入口に顔を向ける。

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