「おはようー」

朝。部活の朝練を終えて教室へと入る。騒がしい教室の自分の席へとかばんを下せば、少し離れた所からみょうじが走ってくる。かわいい。

「丸井君、朝練?」
「おう。まじだっりー」
「そんなこと言うと真田君に怒られちゃうよー」

みょうじはすっかり俺と言う存在に慣れてくれて、こんな風に雑談が出来たりするくらいになった。怯えた表情一つ見せずに俺とこんな風に話してくれるみょうじをみると、頭がふわふわした気分になった。

「あ、あのね」

思い出したようにみょうじがかばんをあさり始める。

「これ、昨日作ったんだけど、苺タルト」

中から出て来たのは小さな保冷パック。さらにその中から弁当箱を取り出したみょうじは、ふたを開けて俺に見せた。

「なにこれ、うまそう!」

中に入っていたのは苺タルト。形はとてもきれいで、市販のやつみたいだ。

「私の家、苺ハウスやってるんだ。毎年ちっちゃいのいっぱいあまっちゃうから作ってみたの。それで、丸井君に……」
「ま、じで!」

みょうじの言葉をさえぎるように発せられた言葉は、決して故意ではなく、無意識に出たものである。だってだって、嬉しすぎんじゃん!みょうじが俺に、菓子くれるなんて!しかも!

「丸井君の口に合うかわかんないけど……」
「合う合う合う!」

手づくり!
みょうじの差し出す手から苺タルトをとって、一口で食べた。あ、もっと味わえばよかったかも。
口に広がる甘い味、砂糖の甘さじゃなくて、苺の酸っぱい甘さ。最高にうまかった。

「うまい!」

始終テンションの高い俺にそう言われて、みょうじの顔は心配そうな表情から嬉しそうな表情に変わる。

「ほんと?よかったーっ」

笑顔になったみょうじに、すごくすごく嬉しくなって、口の中が甘いのにもさらに嬉しくなって。ああ、俺、こんな幸せでいいんだろうか。






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