財前から“お前がええんや”と言われてから二日。
私の頭の中は未だにその事実が信じられなくて、放課後こうして財前を待つ時間が出来たことにも、現実味を感じられないでいた。
ふとコートに目をやると、懸命に黄色いボールを追いかける財前が目に入る。顔も良くて、テニスも全国レベルに上手くて。そんなのが彼氏だなんて、今だに信じられなかった。財前が、キラキラして見えた。

「あーん、もう財前君最高やわあ」
「でも財前君、彼女出来たらしいで!」

フェンス近くでこんな会話が聞こえた。顔の見たことのある、同じ学年の生徒だった。

「ホンマ!?あ、もしかして大岡さん?」
「それが違うんやて。大岡さんフラれたんやて!」
「ええー!大岡さんやないって……何組の子なん?」
「それが7組のみょうじさんって子らしいわ」

どきりとした。それと同時に、物陰へと隠れる。

「知らんなー。でも財前君の彼女なら、めっちゃかわええんやろなー」

“財前君の彼女なら”その言葉が、心臓にぐさりと刺さった。
キラキラした財前と、平凡な私。特に特技もなければ、他より秀でたこともない。

「ええなぁ、私も一回でいいから財前君と付き合うてみたいわ―」
「あは、あんたじゃ絶対無理やて!」

先程の女子生徒たちの笑い声が聞こえる。

私は、財前の彼女としての、自信が無かった。


(ほんまに、私で、ええんやろか)


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -