四天宝寺テニス部の部室は意外と汚い。いや、ホントに汚い。
ばらばらに散らばった漫画やら雑誌やら。それを片づけるのもマネージャーである私の役目なのである。
しばらく掃除をさぼったせいか、(かなり)ほこり臭い部室を掃除するのは大変である。
「えー……なにこれ……」
女性物の下着である。しかも私のものではない。無造作に置かれたそれのサイズは、小ぶりのスイカならすっぽり入ってしまいそうなサイズだった。これは多分あの漫才コンビのものだろう。なんかね、こう、自分のよりも大きいサイズの下着を見るといらっとするね。
小春ちゃんのロッカーはすごくきれいで、私がいじってよい場所ではないため、目つきのめっちゃきついチビの方(ユウジ)のロッカーを開けた。
「きったな」
ぼろぼろジャージに漫才小道具、雑誌。ほんとどうしたらこんな風になるのかと驚いた。
「ん?」
ロッカーの中の雑誌を一冊手にとった。あっらーん、なにこれ、エロ本じゃーん。しかも巨乳モノ!小春ちゃんにはおっぱいがないのに不思議だなぁ、そんな風に思いながら、興味本位でページをめくる。にやにや、今度これでユウジ脅そう、課題やってもらおう。
「おい」
びやあ、そんな間抜けな声が私の喉から出て来たとは思いたくない。背後からの低い声に驚いた私は、恐る恐る振り返る。
「なにしとんじゃクソ女」
あらあら、いつにもまして目つきが悪いですねユウジさん。しかしね、しかしね!私の手元にあるのは君の大切な、そう大切なエロ本なんですよ!
「あらー?そんな口のきき方してよろしいのかしらー?」
ふふん、右手に持ったエロ本をひらひら見せつけてやる。ユウジの顔が一瞬ひるむのを見た。
「ずいぶんおおきいおっぱいが好きなんだねー?ユウジ?」
ユウジを小馬鹿にしていると、振り返った先のユウジがずんずんこちらに近づいてくる。そ、そんなガンつけたって怖くないんだからね!こっちには、あんたの大事なオカズがあ...
ダンッ
「っ!」
お、怒らせた?え?キレてんのこれ?ユウジくん沸点低くないっすか、マジ、え?てかユウジ目つき悪すぎない?ユウジの右腕が思いっきり私の左横をすり抜けて、後ろのロッカーを殴った。そして、すっかりそれにビビりきっている私の手から、エロ本が消えていく。そして、
むに、
「!?」
ユウジの手が、わ、私の右胸を、を、を、
むにむに、
「リアルで触るなら片手から溢れる程度がちょうどいいんじゃボケェ」
「イギャアアアッ!!!!」
振り上げた太ももがそのままユウジの足の間にクリーンヒットしたのはその後の話。