なんなの今日ホント最悪ありえない。
ぐるぐる渦巻くようなあの女子独特の痛みは、やさしさ半分なお薬のお陰でじわりじわりと消え始めているものの、このイライラは到底おさまりそうにない。
「だぁあああ……」
意味もなく、部員の出払った部室で口に出すもアクションはなかった。当たり前か。ワンピース式の制服を脱いで、ズボンを履いた。別に誰もいないしいいやもう……と、ブラにジャージのズボンという情けない格好でTシャツを探しにかかる。あれ、忘れた……?
「お、なまえ」
「おーお疲れ」
なわけないあったあった。
「……じゃない」
「ん?」
「何アンタ普通に入ってきてる訳ありえないほんと!」
バッと手に取ったTシャツで下着を隠す。マネージャー着替え中の札(もちろん自作)をきちんと掛けてきたはずなのに、堂々と部室入りしてきた白石こと変態はゆっくりとこちらに近づいてくる。
「いやいや何こっち来てんの早く出てって!」
「ええやん、俺となまえの仲やろ?」
残念ですがあんたのような変態とそんな仲になった覚えはありません。しっかりと否定しないとこういうのは調子に乗るからね。イケメンだからってなんでも許されると思うなよ!
「こっち来ないで!」
「お、自分意外とウエスト細いな」
「ぎゃああああ」
するりと伸びた包帯を巻かれている左手。上下に動いて私のくびれを確かめるように動くしぐさに鳥肌が立った。もちろんそれは白石のものであって、ああああ。
「うん、完璧や」
いやいや"完璧や"じゃねーから。そこまではまだ許せたけれど(私ってなんて寛容)、白石の手が私の下半身に伸びた瞬間、あり得ないほどの嫌悪と、鳥肌。白石はそれに対してなぜか満足そうに笑うので、女の子の日到来中特有の、あのイラッとした感じが頂点に達した。
「糞エクスタ野郎いっぺん死んでもう生まれてくんな!」
それと同時に私の右足が白石のど真ん中にクリーンヒット。流石私、伊達にテニス部マネージャーやってないわ。
白石は「ぐふっ」という訳のわからない悲鳴を上げてよろめき、へたりとその場にしゃがみこんだ。ざまあ!
Tシャツをさっと着込み、悠然と部室を出ていく私は女の鏡だと思った。