朝に行ったコンビニからかなり離れたと思った。なんだか街中を走る車に、自分自身がどこかへ売られるのかと思った。デリヘルや風俗なんかに。
きらきらネオンは今は光らない。なんて言ったってまだ午前10時。太陽の光から逃れるように、この街は夜を待つのだ。

「ちょっと休憩、な」

マサがそう言って、ある駐車場に車を止めた。薄暗いビルのようなそこに車を止めたマサは、自身の携帯電話を手に取ると、何度かボタンを押した後、それを左耳にあてた。

「――あぁ、赤也。久しぶりじゃの」

"あかや"、どうやら電話の相手は"あかや"と言うらしい。携帯で話す時もマサはあの変な方言のまま。きっと他の誰にでもこんな風に話すんだろうと、なんとなく思った。

「――朝言ったじゃろ、あれ、準備しといてくれ。あとで取りに行くけん」

「――じゃあな」

しばらく話した後、マサは携帯を話して車を出した。どこに行くのと問えば、買い物じゃ、と短く答えた。このとことんのんきな男は、今の状況を把握しているのだろうか。そんな風にため息はつくが、私が彼に逆らってもどうにもならない。それだけは良く分かっていた。今はマサに、ついて行くしかないのだ。

「"あかや"って?」
「あぁ、学生ん時の後輩じゃき。センパイセンパイって、かわええもんじゃ」

意外だった。もともと交友関係とか無いのかと思っていたから。いつも一人で、つまらなそうにしていそうな雰囲気だったのだ。それでもそれが私の私的な見解であり、マサの本当のところなど、私が知る由もないのだが。

「ふうん」

それ以上会話は続かなかった。私は再び、いつの間にか訪れた睡魔に誘われるように眠りに落ちて、意識を無くしていた。夢の中で、私はいつも一人だった。誰かと一緒にいる夢を、私が見たことが無かったのだ。真っ白の夢の世界で、小さい頃はパパ、ママ、と何度も叫びながら走り回ったような気もしなくもないが、今では何度も同じ夢を見ることでそれに慣れてしまい、ぽつりと立ったまま、見えない遠くを見ていた。なんとも暇な夢である。

そして今回も例外ではなく、真っ白な世界に私だけがぽつりとしている、夢だった。

"夢の中くらい、もっと楽しいことがしたいのに"

つぶやいたのは夢の中。誰にも聞こえずにその声は白へと消えていった。






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