寂しいなんて感情、忘れてしまった。
いつも家にいない家族、私の将来をすべて決めてしまう両親、遠巻きに私を怖がるクラスメイト、へこへこするだけの教師、大人。

きっと誰も、ちゃんと私のことを認識している人間なんていなくて、誰も私を見てくれなくて、誰も、私の名前を呼んでくれない。


(両親の力が無ければ、私は私として、私を維持することが出来なかった。月には自ら輝く力がないように、私は親の力だけで光っていたのだ。夜にひっそりと、それだけが私を維持する方法だった。月は私と似ていたのだ。独りよがりかもしれない、意識過剰かもしれない。それでも、それ以外私にはなかったのである。)



「なまえ、」

けれど、私は自分で光る月を見つけてしまったのだ。
今まで似ているなんて、なんて独りよがりで意識過剰だったのだろう。
自分の力でひっそりと、夜に生きるマサを見つけてしまって、自分がなんて愚かで独りよがりで、ちっぽけな存在だろう。
マサから見たら私なんて小さな星の屑でしかないんだろうな、なんて。

「なまえ」

銀髪の髪はさらさらとしていて、本当に、綺麗で。

「マサ」

大好きに、なってしまった。

「大丈夫じゃけん、もうあいつら、いなくなったからな」

私は月に憧れる星屑でしかなかったのだ。

「……まさっ」

抱きしめられれば泣きそうになってしまう。
まるで人間味のないこの男は、だれよりも暖かくて、だれよりも綺麗だったのだ。




「やっぱりお前さん、元の場所に帰りんしゃい」





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テーマ「人外ファンタジー」
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