マサの腕の中で目を覚ます。あたりは真っ暗で、マサのものであろう携帯電話のかすかな光だけが、部屋の中で自己主張していた。
寝息が、聞こえる。
マサの息が私の肌にかかった。まだ寝ているようだった。
マサを起こすわけにもいかないので、そのまま暖かい胸に顔をうずめた。
――……ここは、いったいどこなのだろう?
県名すらわからない田舎町。昼間、部屋の窓からかすかに見えたのは、静かな町と畑だけ。あとは鳥の鳴き声が響くだけであった。
知らないところに、まるで信用のならない男とともにいる。そんな非日常。それを思うとなぜか胸が熱くなるのだ。緊張?不安?
答えは、わからなかった。
「……なまえ」
肩が震えた。
「……なに」
「腹は減らんか」
「……へった、かも」
「よし」
ふと消えたぬくもり。マサが立ちあがり、部屋の中に明かりがともる。
「もう七時か。なまえ、買い物に行くぜよ」
その言葉にゆっくりと起きあがって、準備されていた服に着替える。外気にさらされた服は冷たくて、目が覚めた。
部屋から出ていくマサについて行った。外の世界は、綺麗な星空であった。控えめに輝き続ける石の塊たちが、これほど美しく見えたのは今日が初めてだった。
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