部屋の中はひんやりとしていた。短くなった日はすぐに暮れるだろう。

「……」

マサの鞄の中にあったもの。白い"粉"。
いくつかの密閉パックで詰められたそれが五つ、鞄の中にはあった。
それが何なのか、何を意味するのかはわかっていた。

この殺風景な部屋の中には、スーツもなければ、作業着らしいものもない。あるとすれば、この真新しいパソコンのみだった。私が今、マサがそうだと思っている種類の人間には、どれも必要のないものだけれど。

「……」

眠れない。まるで何かに見られているように、すぐ後ろ、背筋から消えない悪寒。怖い、怖い。


「なまえ」


身体が、震えた。

「ま、さ」
「なんじゃ、寝れんのか」
「……ま」
「震えとるな」

するとマサは、私を掛け布団ごとふわりと抱いて、そのまま一緒に寝転がる。

「大丈夫じゃけぇ」

私はマサが怖かった。なんで、なんであんなものを持っているのか。しかし、不思議なのだ。彼が私を抱き締めると、私の中のその思考は灰の如く風に消え、安心と温かさが体中に広がるのだ。一度は私を抱いた男の身体に、抱き締められながら眠りに就く私は、ひどく滑稽なのだろう。

「マサ……」

でも仕方がないのだ。こんな感情、初めてだったのだから。



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