次に起きた時、私は服を着ていなかった。しかし代わりに、控え目に掛けられたブランケットが私を寒さから守っていたのだ。

窓からは青空が見えた。都会のそれとは違って、やわらかく、青々としたそれは、脳内に浸透して溶けていく。体中がその色に染まったようだった。


「なまえ」

横から聞こえてきた声に視線を動かす前、頬をなでた白い指はマサのものだ。そのままそれに従うように目を瞑り、唇同士が触れ合う。
その柔らかさはのちに温かさに代わり、体中を侵食するように広がって行く。

離れた唇は端を少し上げ、白い指は私の髪を梳いた。

「飯じゃ」

横にあった白いビニール袋。マサはそれを私の横まで持ってきて、笑った。

「……今何時?」
「二時半」
「……私の服は?」
「洗濯しちょる」
「寒いんだけど」
「これ、着ときんしゃい」

次に渡されたのは、使い古したジャージだった。少し不思議なデザインで、なにかスポーツチームを思わせるそれ。まじまじとそのジャージを見ている私に、立ち上がったマサは笑って言った。

「俺が中学の時の部活で使っとったやつじゃ」

中学、こいつにもそんな時期があったのだろうかとぼんやり思った。無邪気で、未来に不安も持たず、ただただ笑って過ごすような幸せな過去が。
マサの横顔は相変わらず死人のように真っ白で、綺麗であった。部屋に入る太陽の光を吸いこんで、さらにそれが倍増する。

「お前さん、料理はできるか?」
「……一応」
「よか。暗くなったら買い物に行くぜよ」

そう言って、彼は浴室へと消えていった。
真昼の太陽も眩しいと感じない室内で、私は一人、取り残されたように視界から消えるマサの背中だけを見ていた。





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