大和「えー、次は明日からの夏休みの注意事項な」


ホームルームが始まる。
教壇に立つ鴻上先生の話を聞きながら、カバンに潜ませたプレゼントの包みを確認する。



(7月20日……今日は、鴻上先生のお誕生日)


先生に片想いをして約1年。
去年の誕生日には、屋上で手作りクッキーをプレゼントすることができた。
秋の修学旅行では、沖縄の海で、2人きりで星空を眺めることができた。


(少しずつだけど、先生との距離も縮まってる気がしてる……だから今年のお誕生日は、この気持ちを伝えたい……)


プレゼントの包みの中には、去年「美味しい」と喜んでくれた手作りクッキー。
それと、先生に似合いそうな赤いチェックのハンカチが入っている。


(ホームルームが終わったら、先生が1人になるタイミングで渡したいな…それで、この気持ちも伝えたい……)


ドキドキと高鳴り始める胸を押さえたとき―。


女子生徒「そういえば先生、今日誕生日でしょ?」


(えっ)


女子生徒がかけた声に、ハッと顔を上げる。


大和「おー、よく知ってんなあ」
女子生徒「知ってるよ〜、先生のプロフィール、女子たちのあいだで出回ってるもん!」
大和「こえぇな…、それSNSで拡散とかすんなよ…」


呆れ顔の先生が言葉を続ける。


大和「あ〜、それに関連した連絡事項だけど……万が一、プレゼントを用意してくれてる人がいても、それは受け取れません」


(えっ!!)


女子生徒「ええ〜!」


途端に、女子たちからブーイングが上がる。


女子生徒「なんでー!?」
大和「教頭先生に言われてんだよ。個人的なもののやり取りは問題になるとかなんだとか…」
女子生徒「そんなのひどーい! 用意してきたのに!」
大和「じゃあそれは、家に帰ってお父さんにプレゼントしてやんなさい」
女子生徒「えー、お父さんキラーイ」
大和「…それなあ、お父さん傷つくぞ」
女子生徒「教頭先生に気付かれなきゃいいんでしょ? コッソリ受け取ってよー」
大和「ダメだ。後で絶対、持ち物検査されるから」
男子生徒「せんせー相変わらずモテモテだな」
大和「どうだ、物理の勉強を頑張れば、お前たちも将来モテモテになれるぞ」
男子生徒「マジかよ、そういうこと?」


ガヤガヤと盛り上がるクラスメイトたちのやり取りが、ただ耳を通り抜けて行く。
私は、ショックで頭がいっぱいになっていた。


(そんな…今年はお誕生日プレゼント……受け取ってもらえないの…?)



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