序章





「集合!礼!」

『ありがとうございました!』


全員で師範に深い礼をしたあと、解散して各々着替えるなり自主練に入るなり、自由にバラける。最近やってなかったし、自主練でもしようかな。


「桜、ちょっといいか」

「はい!」


型を確認しながらとっていく。合気道は滑らかに動けないことには勝てない格闘技。1つ1つの型の移り変わりがスムーズになるように流れで練習していると、師範に呼ばれた。
何の話だろ…まさかお叱り!?あたし何かしたっけ?


「次の大会なんだが、お前は出さんつもりだ。本人の了解も得ないで勝手に進めるのも…と思ってな」

「えっ…どういうことですか」

「この大会は規模が小さい。それに、すぐあとに大きな大会があるだろう。お前にはそっちに備えて温存してほしい」

「…わかりました」


不服ながらも頷くと、師範は戻るように指示した。せっかく、久しぶりに試合できると思ってたのになー…。試合だってちょくちょくやらないと感覚とぶんだよな、あたし。調整って形で1試合でいいから出してほしい。

何か志気下がったな…今日は帰ろ。
自主練を切り上げて道場を出る。面倒くさいし、家も近いから着替えはしない。夜道は少し肌寒かったので、持ってきていた厚手のストールを肩に引っ掛ける。耳にはヘッドホン。多少不格好だけど仕方ない、寒いし。


「うー…さむっ。あ、そうだ。近道しよっ」


家までの近道になる狭い路地に入る。ここ、途中に古い空き家がある上に街灯ないからあんま行きたくないんだけどね。寒いし。
足早に歩いているとその家屋が見えてきた。正面で一旦立ち止まり、ヘッドホンをずらして首に掛け、その古屋を眺める。


「相変わらず不気味な雰囲気出してるなぁ…チビ達が遊び場にする理由が分かんないわー…」


こんだけ古かったら床が抜けたり屋根剥がれてたりしないんだろうか。危ないから行くなって言っとかないとなー。なんて思いながらぼんやり見ていると、急に強い風が吹いた。
お化けとか平気だけど…これは流石にビビった。うん、早く帰ろう。シスターが作ったご飯食べて、チビ達と遊んでお風呂入りたい。

そう思って足を早めて、路地を出たら…


「え?」





  /




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -