初日って、やることが多い
「……桜、お前何やってんだ?」
「…………。あ、土方さんに沖田さん」
初仕事である朝食の後片付けが終わった後。
縁側で空をジト目で見ていると、土方さんに声を掛けられた。後ろには沖田さんもいる。あれ?この2人って仲いいの?
この間はバズーカ撃ったり抜刀したりしてたのに。
「で、何が気にくわねェで空にケンカ売ってんですかィ?」
「別に喧嘩売ってなんかいません。雨だから洗濯物どうしようか考えてただけです」
室内に干すとしても限界がありますよ、この量は。洗濯物がこんもりと積まれた、あたしがやっとこさ抱えられるサイズのカゴ×3を指差して肩を竦める。人数が多いから仕方ないんだろうけど、如何せん干せる場所が思いつかない。
「いつもの集会部屋でいいと思いやすがね」
「集会部屋が更に臭くなって、その部屋の匂いが洗濯物に付いていいならそうしますけど」
「…それは勘弁願いてェや」
この屯所には部屋干し用の洗剤なんて便利な物はない。スーパーとかあるらしいから、そっちにはあるかもしれないけど……ここ本当に江戸時代?
あとついでに台所洗剤も洗濯洗剤も柔軟剤も空になった。更に言うと予備なんてなかった。
まぁ流石にこのままって訳にもいかないし、かと言って風通しのあまり良くないあの集会部屋に干すのは…ね。言っちゃ悪いんだけど、換気がしっかり出来ていない上に成人男性が集う部屋…となると、何というか、流石に臭い。
「なら縁側に干しゃいいじゃねェか」
「縁側……あ、そっか!」
縁側のある家に住んだことが無いために失念してた。
そうだよ、縁側なら屯所を1周するから多分干しきれるだろうし、風通しも申し分ない。調理場とトイレの前を避けたら悪臭が付くこともない。
「さすが土方さん!ありがとうございます!」
「別に大したことじゃねェだろ」
「手伝いやしょうか?」
「お仕事ありますよね?大丈夫ですよー…って、ん?」
沖田さんが家事を手伝う…!?え、何どういうこと?沖田さん家事好きなの?
すっごい意外、と思いながらぽかんと口を開けていると、土方さんが沖田さんを軽く睨んだ。
「サボる口実作ろうとすんじゃねェよ」
「ちぇー」
ああ、そういう事でしたか。あっさりと納得できてしまう辺り、早くもこの屯所に馴染んじゃってるのかな。なんかやだな。
今から巡察だと言う土方さんと沖田さんに手を振って見送り、洗濯物を干しながら屯所をぐるっと一周。少し詰めてどんどん掛けていったら、ギリギリ全部干すことができた。
「さて!次は掃除!」