目覚めたら、江戸時代
「近藤さん、アイツの様子どうです…って、起きたのか」
「おお、トシ!丁度さっきな」
と……トシだと……?新撰組でトシと言えば、鬼の副長・土方歳三…!薄桜鬼で一番好きなキャラだったよ土方さん。
もうこれは本当に幕末にタイムスリップしたんじゃないかな。なんか感動するっていうか、何で時間を越えたんだろう。
でもこの人達和服じゃなくて洋服だ。真っ黒の同じ服着てるし…浅葱色の羽織は…?
「傷の調子はどうです?」
「まだ塞がりきってないからなぁ…動かない方がいいな」
「んじゃあ、とりあえず暫くはウチで保護になるな…」
不快な匂いに思考に浸っていた意識を戻す。視線を泳がせると、先程入ってきた人が煙草をくわえていた。
元凶これか。
「…あの、すみません。煙草消してもらっていいですか」
「あ?別にいいだろ」
「良くないです」
「何でだよ」
不機嫌そうに眉間にシワを寄せて投げ掛けられた問いに、嫌いだからと一言で返す。助けてもらったのに失礼な態度だとは思う。
でもこれだけは嫌だ。
「まぁまぁ2人とも落ち着け。トシも、彼女の傷が開くといけないから…煙草消してやれ」
「チッ…わーったよ」
「すまなかったな桜さん。コイツはウチの副長の…」
「土方十四郎だ」
やっぱり土方歳…十四郎?聞き間違い?いや違う。はっきりそう言ってた。え、ほんとにここどこなの…?
あたしの名を教えている近藤さんの声を聞きながら、再び思考に潜る。
ここは普通に考えたら江戸時代。新撰組ってワードを聞く限りは、だけど。でも近藤さんも土方さんも下の名前が違うし……。
なんだか徐々に頭が回らなくなっていってる気がする。背中も痛くなってきて、生暖かい感じが…
「……ん?ちょ、桜さんんんんん!?傷口開いてるんですけどォォォォォ!!」
「なっ……!」
ああ、この痛みってそれだったんだ…。なんて呑気に思ってるうちに、だんだん意識が薄れていく。近藤さんと土方さんの焦ったような声をBGMに、あたしの視界は暗転した。またかよ。