あたたかな家(1/2)
慣れない山道をロイドに手を借りながら進むこと30分。私の息が上がってきた頃、彼が着いたぜ、と言って笑った。
顔を上げて見えたのは、テレビの画面で見ていたものと同じ…ううん、そっくりだけどもっと澄んだ雰囲気の景色が広がっていた。さらさら流れる小川には橋が掛かっていて、その奥には可愛らしい花がたくさん咲く花壇と木でできた家がある。
「ユリ、大丈夫かよ?」
「…う、うんっ」
予想していたよりも長かった道のりに、すっかりバテてしまったみたいです。体力つけないと…。
膝に手を置いて息を整えていると、ロイドが背中をさすってくれた。
「ごめんね、ありがとう」
「気にすんなって」
ロイドは私の呼吸が落ち着くまでそうしてくれた。随分と楽になってきて、ふぅっと息を吐いた後、もう大丈夫と告げて体を起こす。
そのまま彼の後ろを歩いて、家の前へ。
「ただいまー!親父、ちょっと来てくれー!」
「なんでぃロイド!…って、そっちの嬢ちゃんは?」
「こ、こんにちは」
ロイドがドアを開けると同時に声を張る。すぐに奥の部屋と思われる場所から出てきたのは、浅黒い肌に小さくてがっしりした体つきの男の人。
この人が…。
「ユリっていうんだ。こいつ、しばらく泊めてやれねぇかな?事情は話すから」
「…よく分からねぇが、訳ありみてぇだな。まぁ入りな!」
「すみません、お邪魔します」
ぺこりと頭を下げて、家に足を踏み入れる。木の優しい香りと窓から入る柔らかい木洩れ日の光に気持ちが落ち着く。
促されるようにして、ロイドの隣の席に座る。
「そんじゃあ、まずは自己紹介でもしとくか。オレぁこいつの親父でダイクってんだ」
「ユリ、と申します。突然押しかけてしまってすみません」
「ユリ嬢ちゃんだな。まぁそう固くならないでくれや」
「あっ、はい。ありがとうございます」
結構リラックスしてるつもりだけど…。隣のロイドに目を遣ると、そうだぞと言わんばかりに頷かれてしまった。言葉遣いのせい?
思わず苦笑してしまってから、再びダイクさんに向き直る。
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