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「…にしても、天気いいなぁ、ノイシュ」
「クゥ〜ン」
イセリアの裏手にある山の中腹。
ノイシュと呼ばれた生き物の背に乗って、のんびりと足を進めている赤い服の少年がポツリと呟く。
「そう言や、来週算数のテストだっけ? …また赤点だろうなぁ。授業サッパリ判んねーし」
少年がぼやいていると、ノイシュがある一点を見つめ急に立ち止まった。
「クーン。キュゥゥーーン」
「ん? どうした、ノイシュ?」
「ウ〜〜〜……。ワンッワンッ!」
彼に何かを伝えるかのように、先ほどから見ていた方に向かって吠え出した。
「あっちか? 一体何があるんだよ………っ! 人!? おい、大丈夫か!? しっかりしろ!」
彼がノイシュの吠えた方向にある茂みの中を覗いてみると、そこには倒れている少女。
彼は慌てて駆け寄り、少女を抱え起こす。様子を見ると外傷などはなく息もあるので、ただ単に気を失っているだけのようだ。ノイシュが心配そうに鼻を鳴らす。
「クーン?」
「よかった、気絶してるだけか…。けどここにいても仕方ないし、とにかく村へ運ぼう。先生ならなんとかしてくれるだろ。ノイシュ、屈んでくれ」
彼は少女が無事であることに安堵し、衝撃を与えないようそっと抱き上げてノイシュの背に乗せ自分もその後ろに乗る。
少女が落下してしまわないようにしっかりと支え、村へと急いだ。
***
「っ……ん…?あれ、私…?」
布団の柔らかさを感じて目を開けると、そこは見慣れない部屋だった。え?本当にここ何処?
体を起こし、目覚めたばかりのぼんやりした頭で考えてみるもこんな部屋は自分の記憶には全くない。
確か…竜牙とコンビニに行く途中に神社の前で変な音が聞こえてきて……それから…えーっと…。
「そうだ、落ちたんだった…」
かなり長い間落下する感覚を味わっていた気もするし、相当な距離を落ちたはず。なのに体には怪我どころか痛みすらない。
とりあえず状況は把握しないと、と思って周りを見渡す。右側を向いた瞬間、驚愕。
「な、なな……何これ?えっ、これ私?」
そこにあったのは鏡…だと思う。ただ映っているのは私のはずなのに、髪は薄い紫色で瞳は青。
しかもその髪はありえない程長い。目線を下げてみると今座っているベッドの上で広がっている髪が目に飛び込んでくる。長すぎる……。
―ガラッ―
いきなり扉が開く音。びっくりして振り向くと、見知らぬ男の子。
「あ、気がついたのか!よかった!」
目が合うとにぱっという効果音が似合いそうな笑顔を浮かべた、茶髪に赤い服の男の子。えーっと……誰?
何か言わなきゃいけないって事は頭では分かっていても、引きつった笑みを浮かべるしかできない。何でだろう、なんとなく見たことがある気がするのは…。
何も言えずに固まっていると、再びドアが開いた。
「ロイド!女の子が寝てる部屋にノックもなしで入るなんてバッカじゃないの?」
「起こしちゃだめだよ……あ、もう起きてたんだ。だいじょぶ?」
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