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学校を出る時、リフィルさんがロイドに何やら耳打ちするとロイドが凄く嫌そうな顔をしていた。何言われたのかは知らないけど、コレット達が宿題多いって言ってたからそのことだと思う。
こっちに歩いてくるロイドの表情は明るいものではなかった。
「行くか」
「あ、うん。大丈夫?」
「ああ。宿題が嫌なだけだから」
やっぱり。宿題忘れるなって釘でも刺されたのかと思ったみたいな事を言ったら、何で分かるんだよって驚かれた。
そういえば、ここの世界と地球って文字は一緒なの?確かアビスやグレイセス…あとヴェスペリアもCM見る限りじゃ文字違ったと思うけど。
もし違ったら…読めなかったら私すっごい怪しい人物になるんじゃない?
「あのー…ロイド、その宿題見せてもらっていい?もしかしたら分かるかも」
「ホントか!?これなんだよ〜」
渡されたプリントを見ると見慣れない文字の羅列。なのに不思議と書いてある内容が理解できる…。全く違う言語だったらどうしようかと思ってたけど、なんとかなるみたい。
それにしてもこの範囲って、中学校レベルじゃ…。
苦笑しながら、以前習ったから教えられる旨を伝えると凄く嬉しそうにしてた。
「すげーな。ユリって頭良いんだな!」
「いや、そんなことは…真ん中くらいの成績だったよ」
「そうなのか?」
「うん、私より頭いい友達なんていっぱいいたし」
「へー…俺なんて九九もまだあやふやなんだもんなー」
「そ…それは流石に…」
駄目なんじゃ…と苦笑すると、だって7の段がややこしいんだ!と頭を掻きながら悔しそうに言った。このまま勉強の話を続けるのも悪い気がしたから、ロイドの家が何処にあるのか聞いてみた。
すると一気に元気を取り戻して、村の外にあるんだ!と笑顔で言ってくれてホッとした。
そうこうしている内に村の出口に着いた。…何か大事な事を忘れているような気がする。私がいた世界とは全く違う、何か…。
「ノイシュー!…って、いないのかよ!!」
「ノイシュ?」
「俺んちの犬。いつもなら乗って帰るんだけど今日は先に帰っちまったみたいだ。そういやさ、ユリって戦えるのか?」
ロイドの唐突な質問に思わず間の抜けた声を出してしまう。
戦えるかって…そっか。忘れてる事ってコレだった、この世界には魔物がいるんだったっけ。ここで過ごす事になるんなら、戦いも覚えないと駄目なんだ。
首を横に振ってごめんと言ったら気にすんなって笑ってくれた。
「この森の魔物、そんなに強くないからさ」
「え、そうなの?」
確かに一番最初に魔物と戦う所だからレベルは低いと思うけど…ゲームで戦った時は自分もレベル1だし。
…って、そっか。今はもうここが現実世界ってことになるんだ。レベルとかシステムとかは全く関係なくて、自分の実力が全てなんだ。もちろんHPとかがあるわけじゃないんだし、致命傷をひとつ負うだけで死ぬこともあるんだと思うとぞっとした。
剣術教えてもらおうかな、ロイドに。でも私腕力無いしなぁ……。
そこからロイドの家まで戦闘について話しながら歩いて帰った。
ロイド曰く、武器は自分にしっくりくるなら何でもいいんじゃないか?とのこと。
うーん…ゆっくり考えることにしよう。
何故か道中、魔物に遭遇することは無かった。いつもなら少なくても2〜3匹は出てくるんだけどなぁと、ロイドも首を傾げていた。戦わずに済むに越したことはないけど、私はまだ、これから何かあるんじゃないかと嫌な予感がせずにはいられなかった。
世界を超えた出逢い
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