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「姉さん、僕達のところは駄目?」
「できるならそうしてあげたいけれど…私達の家にそれほどの広さはないでしょう?」
「そっか……そうだよね」
目を伏せて首を横に振ったリフィルさんを見てしゅんと肩を落とすジーニアス。
気にしないで、ありがとうと笑うとロイドが何かを考え始めた。その直後、コレットが息を切らしながら走ってきた。
「はぁっ…はぁっ…。ご、ごめんねユリ。来年の神託に備えて…色々あるから駄目、って言われちゃった…」
「コレットの所も駄目か…」
ロイドが唸りだした横でコレットの背をさする。全力で走ってきてくれたんだろうな。ゲームで見たままの優しい子だと思った。
私の様子を見ていたジーニアスがロイドの方を振り向き、彼の顔を見上げる。
顔を上げたロイドは私のことをじっと見て、笑顔で言った。
「こうなったら俺の所しかないだろ?親父だったらきっといいって言ってくれるさ」
……えっ?ちょっと待って。だって私一応女だよ?ロイド男の子なんだよ?
みっともないことにあんぐりと口を開けてしまった私にどうした?と聞いてくる彼。いや、どうしたって…
「あの……ロイド、いいの?私…女だよ」
「え?何当たり前のこと言ってんだよ」
こういう方面のことに鈍いのもゲームと同じなんだね。むしろゲームより酷いんじゃないかな…?
「ユリ、ロイドにそういうこと言っても無駄だよ」
「そう、みたいだね…。でもほんとにいいの?」
「いいって!あ、そうだ。ユリは動物って好きか?」
「動物?大好きだけど…」
それがどうしたのか聞くと頭を掻きながら家に犬がいると教えてくれた。
…犬?ロイドって犬飼ってたっけ?と思っていると、ノイシュは犬じゃないでしょ!いや犬だって!というやり取りが始まった。そっか、ノイシュのことだったんだ。
目の前の3人のやりとりを見ていたら自然と幼馴染の事を思い出していた。似たようなやりとりをしていたからなのかもしれない。
もう、会えないのかな。花梨と竜牙だけじゃなくて、お父さんやお母さんにも…と思ったら目の奥がツンとした。そのままぼんやりと話を聞いていたら、ロイドが私を見てぎょっとした顔をした。
「えっ、ユリ!?どうしたんだ、どっか痛むのか!?それとも…えーと、俺達、何か変な事言ったか?」
「へ?そんなこと無いけど…どうして?」
「いやだって、泣いて…」
頬を触ってみると、確かに濡れていた。言われるまで気づかないなんて、なんてお約束な…。
しどろもどろになりながらも、3人のこと見てたら故郷の幼馴染の事を思い出しただけだからと告げる。すると頭にポンと大きな手が乗っかった。
「元気出せって!一生帰れないって訳じゃないだろ?」
そのままわしわしと撫でられ、ロイドが手を離すとジーニアスとコレットに飛びつかれた。
「そうだよ!それまでここにいればいいんだからさ!」
「寂しいかもしれないけど、私達もユリの帰る方法探し手伝うから、ね?」
「…うん、そうだよね!ありがとう!」
3人のおかげで涙も止まり、ロイドの家へにお邪魔する事になった。励ましてもらったからか、随分と吹っ切れている自分には驚いたけど。
歩けるか尋ねられ、大丈夫だよと笑いながらベッドを降りる。さっきまで布団の上に広がっていた髪がストンと下に落ちる。
「ユリの髪長いね〜」
「そこまで伸ばすの大変だったんじゃない?」
「あ、あはは…」
目が覚めたら物凄く伸びてましたなんて言えません。
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