ShootingStar-05
プラットフォームに下りると、激しい雨が顔に鞭を打っているようだ。
そこはいろんな寮の上級生でごった返していて、前もよく見えない状態だった。
新入生は船で湖を渡ってホグワーツの城まで行くらしいが、こんな大雨では絶対に無理だ。
空を見上げるとあちこちで稲妻が走っている。
新品のローブはぐしょぐしょだったし、荷物にも泥がはねていた。
せっかくの入学式なのに、こんな天気なんて最悪・・・
そんなことを思いながら突っ立っていたが、急に人の波が動き出したので、そのまま流されてしまった。
着いた場所は湖とは反対側の広い場所で、馬のない馬車があちこちに停まっている。
何人かの生徒はもう乗り込んでいて、馬車は列を成して次々に発車していた。
生徒達をよく見てみると、自分よりもずっと背の高い人ばかりで、ネクタイにはそれぞれ寮のカラーが刻まれている。
一人だけはぐれてしまったかもしれない。
そばを通りかかった上級生にきこうとしたが、一歩前に踏み出すと同時にぬかるみにはまって四つんばいになってしまった。
ローブは無残に泥だらけだ。
あぁ〜もうどうしよう・・・
目には涙がこみ上げてきた。
激しい雨で誰もそんなことに気付いてはくれなかったが・・・
「大丈夫か?!」
不意に後ろから誰かの声がした。
振り向くと男子生徒が手を差しのべている。
それをつかんでどうにかぬかるみから抜け出すことができた。
「うっわ、派手にやったな」
恥ずかしくて下を向いていると、その生徒はローブから杖を取り出した。
「マグル出身?ちょっと待ってろよ」
ニィっと笑ったかと思うと
「スコージファイ!」
そう言って杖をローブに向けてきた。
たちまち杖の先から金色の光が出て、ローブの泥はキレイになくなった。
ビックリして杖をじいっと見つめていたら
「魔法を見たのは初めてか?」
と言って得意げに笑った。
顔を上げてその生徒を初めてよく見てみると
透き通るほど白い肌は本当に綺麗で、髪は今日の夜空のように真っ黒だった。
雨でぬれた前髪の下には曇りのない瞳が優しくこっちを見ている。
つい言葉を失ってしまうほどだった。
「ははっどうしたんだよ。そんなにビックリすることか?」
と無邪気に笑い、肩をポンポンたたいてきた。
「あれ?そういえばお前も新入生?」
今まで気付かなかったが、その生徒のネクタイは自分と同じように真っ黒で、真ん中にはホグワーツの校章がついている。
「何だお前もはぐれたのか?」
「うん」
「もう船は出たみたいだ」
そう言ってその生徒は林の向こうの湖を眺めた。
視線を追ってみると、真っ黒の湖に黄色いランプの光がゆらゆらと揺れている。
「え!ホントに船で行くの?!」
「そうみたいだな、でも俺はゴメンだ」
「どうしよう・・・」
「大丈夫だって、この馬車は船よりも早く城に着くから、隠れて船着場まで行けばいいだろ」
本当に何の心配も無いようで、逆に楽しんでいるように笑う彼を見ていたら・・・
何だか自分もさっきまで考えていた不安が馬鹿らしくなってきた。
「あの馬車に乗るか、あまり目立たないし」
そういって彼は林の影にある真っ黒の馬車を指差した。
「荷物重いだろ?一つ持ってやるよ、えっと・・・」
「あ、なまえ。なまえ・みょうじっていうの」
「そうか、かわいい名前だな」
そういってなまえの一番大きな荷物をひょいと持ち上げた。
「俺はシリウス。シリウス・ブラック、よろしくな」
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