ShootingStar-04



体中を風がつきぬける様な感じがする

すごい速さで回りの景色が通り過ぎていく

時々体が縦に揺れ、かすかに荒い息遣いが聞こえた


視界はまた真っ暗になる





****************

勢いよく扉が開いた。

シリウスはなまえを抱えたままだったが、その勢いに押されてドアが勝手に開いたのだ。

医務室には誰もいない。

マダムポンフリーも朝食をとりに行っているのだろうか?

ベッドはすべて空だった。

シリウスは一番奥の影になっているところを選び、ゆっくりとなまえを寝かせることにした。


相変わらず顔色が悪い。

ただでさえ白い顔が今日はさらに青白かった。

何か出来ることがないかと辺りを見渡したが、病状がよくわからないし・・・
薬には自信があったが、無理に使うのはよくないと思ってあきらめた。

軽く毛布をかけて、ネクタイとボタンを1つはずしてやる。

それから、シリウスはポケットに手を突っ込んで何かを探し始めた。

取り出したのは羊皮紙の紙切れ。

忍びの地図だ。


急いで地図中に目を走らせると、マダムポンフリーはやはり大広間で食事をとっているようだった。

シリウスはしばらく考え込み、勢いよく医務室を出て行った。


****************

「そういえばシリウスはまだかな?」

ベーコンエッグを皿にとりわけながら、ジェームズが思い出したように言った。

「ちょっと遅すぎるね」

リーマスはフォークを置いてきょろきょろと辺りを見回す。

「昨夜も遅かったよね〜、よくやるよ」

ジェームズがククッと笑った。

「シリウスったらまたやってるの?見つかったら退学になるわよ」

リリーは“理解できない”という顔で頭を振る。

「何か気に入らないことがあったり、一人で考えたいことがあったらよくするよね」

リーマスは紅茶にありえない量の砂糖を次々と入れながらうんうん頷いている。

「まぁね〜、昨日もいろいろあったし」

ジェームズは大広間の入り口の方に首を動かした。

「まだ思い出してないの?シリウス」

リリーはリーマスのほうを見る。

「そうみたいだよ。相変わらず鈍感だよね」

呆れるようにリーマスはクスクス笑った。

「あ〜、あの子だろう?1年の組み分けの日の」

ジェームズは昨日とは打って変わって得意げに人差し指を立てる。

「あら、あなたもやっと思い出したの?」

ジェームズはリリーに向かってウインクする。


「女の子の顔は忘れないよ。多少変わっちゃってもね♪」


その時大広間のドアが開いた。

騒がしかったが、あまりにも勢いよく開いたのでほとんどの生徒が気が付いた。

入ってきたのは男子生徒で、そのまま生徒用テーブルを素通りして教職員テーブルに向かっている。

早歩きと言うより、走っていると言ったほうが正しかった。


「ん?あれシリウスじゃない?」

「ホントだ」

「何をそんなに急いでるんだろうね〜」

シリウスは先生の前だというのに身じろぎもせず、マダムポンフリーの前までずんずん進んで行き、ひどく慌てた様子で何かを必死に説明していた。

マダムポンフリーは持っていたゴブレットをおいて、シリウスの後について大広間を出て行った。


「どうする?何かあったみたいだけど・・・」

ピーターが心配そうに皆を見回す

「まぁまぁ、食事が終わってからでいいんじゃない?」

「そうね〜」

「そうだね」


ジェームズはテーブルの向こうにひとりで座っているエミリアをチラッと横目で見ながら、機嫌よさそうにパンを口に放り込んだ。


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