ShootingStar-02
「いってー」
「あ、あのごめんなさい・・・」
「あーもうシリウス何やってんの〜?」
ジェームズがスタスタと歩み寄り、シリウスの片腕をグイッと持ち上げた。
「こいつがいきなり前から・・・」
「はいっ!ごめんね〜なまえ。このデカブツがちゃんと前見てなくて」
何か言いかけたシリウスをドンと押しのけて、ジェームズが笑顔でこちらに駆け寄ってきた。
「ケガはない?」
リーマスもなまえの隣にしゃがんでこっちの様子を伺っている。
「あ、うん。私は大丈夫」
シリウスは悪態を吐きながらむくっと立ち上がった。
なまえのほうを見てみると、リーマスがシリウスに凄みをかけて睨んでいる。
背筋に寒気を感じる。
「あ〜ゴメンなまえ・・・本当に大丈夫か?」
「うん。こちらこそごめんね・・・」
「ほらなまえも立ち上がって!」
エミリアが腕を引っ張ってきたので、ゆっくり立ち上がる。
本当は倒れた時に腰を打ってすごくズキズキしていたけど、ここでそれを言っては、不機嫌そうなシリウスをもっと機嫌悪くしてしまいそうな気がする・・・
痛みをこらえてなまえは笑顔を作ることにした。
「医務室に行ったほうがいいんじゃない?」
隣でリーマスが心配そうにしている。
「大丈夫だから・・・ホントに」
その光景を見ていたシリウスは無性にむしゃくしゃしてくる。
「いてっ」
次の瞬間ジェームズがシリウスの横腹に肘打ちをくらわした。
グゥ〜〜〜
突然廊下に低い音が響く。
「あの・・・僕・・・ホントのホントにおなかへっちゃった・・・」
ピーターが申し訳なさそうに皆を見回す。
「フフ、そうだね。談話室も静かになったし、皆もう行っちゃったかも」
リーマスはぐるりと談話室の中を見渡した。
「引き止めちゃってごめんなさい・・・」
なまえはぺこりと頭を下げた。
「ううん、いいんだよ。それより一緒に大広間まで行こうか?」
ジェームズがいつもの軽い笑顔でそう言ってくれるのがすごく心強い。
でもその誘いをなまえは断ろうと思ったのだが
「そうだよね♪一緒の寮だし!」
エミリアが嬉しそうに微笑んでなまえの背中をバンと叩いたので何も言えなかった。
太ったレディの肖像画をこえて、6人は廊下に出た。
前のほうにはまだグリフィンドール生の後姿が何人か見えている。
一番前をシリウスがズンズンと歩いていて、その後ろでジェームズとエミリアが楽しそうに何か話していた。
その後ろをピーター、それからさらに少し離れたところをなまえがとぼとぼ歩いている。
リーマスはなまえの隣で歩調をあわせてくれている様だ。
なまえが腰を怪我したことに気付いているのだろうか?
大広間に着くと、ほとんどの生徒がそれぞれの寮のテーブルについていた。
席がほとんど埋まっていたので、なまえ達と例の4人組はそれぞれ別々に席に着くことにした。
というのも、グリフィンドールのテーブルで同じ寮のリリーが4人分の席を取っていて、ジェームズたちに気がつくと大きく手を振ったからだ。
さっきまでエミリアと仲良く話していたジェームズは「それじゃ」と言うと足早にリリーの隣まで歩いていった。
エミリアは少し寂しそうな顔をしている。
「なまえってあの子でしょ?」
テーブルに近づいていくと、リリーがそそくさと聞いてきた。
「ああ」
愛想なく答えながらシリウスは椅子に座った。
その隣にジェームズも来て「シリウス最悪・・・」と意味ありげにつぶやいて椅子に座る。
シリウスはジェームズを睨もうとしたが、目の前に座っているリーマスからなんとなく圧力を感じるので、下を向いて聞こえないふりをした。
「なまえって静かでおとなしい子よね。だけどすごく優しいのよ」
リリーがスプーンを咥えながら横目でシリウスをチラッと観てくる。
シリウスはリリーとは反対側にあるチキンを手にとって自分の皿の上に置いた。
「リーマスとは普通に話してたね」
ピーターが満足そうにほおばりながら言う。
「うん、いい子だよ」
リーマスもさっきとは打って変わってニコニコした表情だ。
「だから何?」
シリウスがうんざりという顔で吐き捨てるように言った。
リリーとリーマスのクスクス笑いが始まる。
「あのさぁ、お前らいい加減・・・
「そういえばジェームズ、さっき隣にいた子は誰?」
リリーはシリウスの会話をはさんでジェームズを食い入るように見た。
ジェームズは一瞬動きが止まったが、何事もないかのようにかぼちゃジュースを一口飲む。
「リリー、僕には君だけだから何も気にすることはないよ」
リリーはまじまじとジェームズを見ると
「そうね、そのとおりだわ」
と言ってジェームズの頬に軽くキスをした。
他の3人はいつものことだと言わんばかりに、もくもくと食事をすすめる。
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