「え、本当に?」
コクンッと首を縦に振ったドラゴンに僕の表情は一気に驚きに染まった。地面に書いた彼のお世辞にも綺麗とは言えない文字、それが物語っていた。
今のドラゴンは声を失ったのだと。
「な、なんで…?」
ちょっと声に震えが止まらないまま聞いてみると、また彼はガリガリと地面に文字を書く。わからない』っと
「そうなんだ…、じゃあ急に喋れなくなったの?」
その文字を見てからドラゴンを見れば、またコクンッと頷いた。
「そっか…」
突然に声が出なくなったか…。人間なら医療のアテがあるにしろ、なにせドラゴンはクリーチャー。未知の領域になってしまう。
「……。」
どうしようも出来ない、それが脳裏にこびりつく。
僕があれだったら…なんて願望さえも考えられない位に
「…?」
うーん、と唸り、立ち尽くす僕にふとドラゴンが手招きするのが判った。
「どうした、の…」
気になって歩み寄ってから座る彼に屈み込む瞬間、ふわり、と彼の唇が押し当てられ言葉はかき消された。
「ドラゴン?」
「……」
急なことに思考が付いていけなくて、じっと彼を見つめればフッと笑い、口を動かす。
『気にするな。』
「…君ってやつは…」
僕の心配より、自分の心配をしたほうがいいんじゃない?っと悪態付けば、ドラゴンはきょとんと首を傾げる
そんなドラゴンに思わず笑みが溢れてしまう。なんでだろ、今の彼は喋れない筈で、深刻な状況なのに
「…きっと、治るよね?」
「!」
そうドラゴンに聞けば力強く頷き、またニコリ。
声が出せないなら心で通じあう。そんな摩訶不思議なことが今起こってるんだ、と染々思った。
「声が戻ったら、一番に僕に好きって言ってきてね?」
きっと君の声は戻るよ。
そんなおまじないを添えて、
今度は僕から彼にキスを送った
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