チョコフォンデュ

水の月14日

毎年この日になると、ナインさんの誕生日会を兼ねて私たち11人でチョコフォンデュをします。
世間一般的にはバレンタインというと女性から意中の男性にチョコをあげるという日とトレイさんは言ってましたけど。
私たちが小さい頃はマザーが準備から何からしてくれましたがここ数年は私とエースさんで準備をしています。たまにはこういう日もいいかなって。

チョコの甘い香りが台所中に広がる。程よいくらいに溶けてきたので牛乳を入れかき混ぜる。


「あ、エースさん、そっちはどうですか?」
「大丈夫、順調だ」

毎年そう言うが慣れない手つきでイチゴを切る。見ていてとっても危なっかしいです。




「痛っ」

そんなこと思ってた矢先に・・・ふふっ。仕方ないですね。

「大丈夫ですか?」
「大丈夫だ」

傷口を舐めながら彼は答える。

「はい、絆創膏どうぞ」

ポケットから絆創膏を1つ取り出す。

「ん、あぁ、ありがとう」
「いえ、気にすることないですよ」
「デュースは用意周到だな」

私は悔しがるエースさんの顔が見たくてちょっと意地悪したくなった。

「エースさんがケガするのは毎年恒例なので、今年はと思って。どうやら持っていて正解のようですね」

ちょっと勝ち誇ったように言ってみる。

「言い返せないのがちょっと悔しいな」

彼は笑顔で答えたが少し悔しそう。
期待通りになってちょっぴり嬉しかった。



「デュース、こっちの準備はできたよ」
「はい、こちらも準備完了です」
「じゃあ、向こうの部屋に運ぼうか」
「では、エースさんはイチゴなどをお願いします。私はチョコを」

チョコの入った鍋の火を止めて・・・っと。
今年も上手く出来ました。 これで準備万端です。

私は鍋を持って慎重に歩きだした。そう、慎重に。


違和感を感じた。

なぜだろう、足が浮いてます。
時間が経つのがとても遅く感じます。

そしてなんだか・・・熱いです。

「きゃっ!」 

気付いた時には遅かったようで、私は鍋を持ったまま何かに引っ掛かり転んでしまったようで。
そして、チョコを頭からかぶったようで、体中チョコまみれでベトベト。

最悪です。

声を聞いたエースさんが駆けつけてきた。こんな私を見ないでください・・・


「・・・デュース・・・」

「えっ?」

「これじゃまるで『チョコフォンデュース』だな」

エースさんはほほ笑みながら勝ち誇ったようにそう答えた。

「もうっ!誰が上手な事を・・・!からかうのはやめてください!」

どうやら形成逆転されたようですね。

エースさんが近づいてきて、私の前でしゃがんだ。
すると私の頬についたチョコを指でなぞり、それを舐めた。

「みんなでチョコフォンデュ出来なくなったけど、僕だけは『チョコフォンデュース』が出来るようだな」
「もうっ!」








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