飾らない心




朝の日差しが窓から差し込む。その眩しさからアタシは目が覚めた。

「う〜ん。今日はお休みだっけ?」

久しぶりの休日、もっと寝ててもいいけれどアタシには行くところがあった。




「トレイー起きてるー?」

ドアを近所迷惑になる勢いでガンガンと叩いた。しかし返事がない。

「トーレーイー!!起きてるんでしょー!?起きてるなら返事しなさいよー!!」
「おや、ケイトでしたか。早いですね。おはようございます!!」

突然ドアが開きびっくりして尻もちをついた。

「起きてるなら返事しろっつの!」
「読書してましたからね、気づかなくて当然です。」

そんなことドヤ顔で言われても困るって!

「ところで、休日の朝早くからなんのようです?私眠いのですが?」
「あ、そうだった。トレイ、今日休みだし今から散歩しない?」
「散歩ですか。わかりました、ご一緒します。」



朝の散歩は清々しい。昨晩雨が降っていたからか草花に雫がつもっていた。
特に会話もないこの状況をどうにか打破しないと!!

「雨降ってたんだ・・・寝てたから気付かなかったわ・・・」
「私も読書してましたから気付かなかったですね・・・」

どんだけアンタは本が好きなのよ!もう本と結婚しちゃえばって感じ!

「アタシ雨って嫌いだな・・・だって外で遊べないしジメジメしてるし。」
「そうでしょうか、私は静かに読書ができるのでわりかし好きなんですけど。」

さっきから読書読書って信じられない!いい加減にしてよ!
「アンタさっきから読書読書って読書以外にやることないの!?トレイなんて知らない!勝手に読書でもなんでもしてなさいよ!本が恋人かっつーの!アタシ帰るから!」

せっかくアタシのお気に入りのこの場所に連れてきたのに、トレイってばずっと本が本が読書が読書がって・・・!アタシのこの気持ちまったく分かってない!

悔しい思いのままアタシは走り去る。

そこには雨露きらめくシンビジュームの花が咲いていた。





(おや、こんなところにシンビジュームが・・・。そういえば、シンビジュームの花言葉は『飾らない心』でしたっけ・・・。 まったく、ケイトらしいですね。)




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