杏寿郎が亡くなり半月が経った。怪我が完治した炭治郎達が任務をこなし始める一方で、愛梨は未だ折れた肋骨が完治せず蝶屋敷で療養していた。
『(このままじゃダメだ、もっと強くならないと…)』
愛梨は怪我が完治していないにも関わらず、毎日修行に明け暮れる。
『(もっと強く、もっと鋭く…)』
猗窩座の頸に刀を当てた時、愛梨の刀は多少食い込んだ程度で頸の三分の一も斬ることが出来なかった。
猗窩座に胸を貫かれた杏寿郎ですら頸の半分近くまで刀を食い込ませていたにも関わらず、自分はその半分にすら力が届かなかったのだ。
『(私がもっと強ければ、頸を斬ることが出来たのに)』
頸の斬れない鬼に出会ったのは初めてだった。猗窩座の頸を斬れなかった事も、杏寿郎が帰らぬ人となった事も、誰のせいでもない。愛梨を責める者もいない。
けれどもしあの場にいたのが自分ではなく柱の誰かだったら…自分が杏寿郎と共に戦える程の力を持っていたらと…毎日のようにそんな事を考えてしまう。
『痛っ…』
無理に動きすぎたのか、愛梨の肋がミシリと悲鳴を上げる。けれどただ寝ているだけでは体力は落ちていく一方で、愛梨は少し休憩を挟み再び修行を始めた。
………ーーー
「愛梨さん大丈夫かなぁ」
「まだ怪我が治ってないのに」
「けど私達が止めても聞いてくれないし…」
刀を振る愛梨を影から見守るきよ、すみ、なほの三人は、日に日に増えるその鍛錬の量に愛梨の体を心配する。
しかしこの屋敷で唯一愛梨わ止められるしのぶは数日前から屋敷を空けており、誰も愛梨を止める事が出来ない。
「あいつ、あんなに動いて大丈夫なのかァ?」
「風柱様!」
しのぶから杏寿郎の任務に同行した愛梨が気落ちしていると聞き様子を見に来た実弥は、きよ達に愛梨の怪我の具合を聞く。
「しのぶ様はリハビリ程度なら動いていいと仰ったんですが」
「日に日に修行の量が増えていて」
「私達が止めても無理はしていないの一点張りで…」
「分かった、俺が止める」
きよ達はお願いしますと実弥に頭を下げ、それぞれ自分達の仕事へと戻っていった。
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