初めて不死川さんに会ったのは、私が初の単独任務に就いた時だった。
運悪く複数の鬼に遭遇し手こずっていた私の前に現れた不死川さんはあっさりと鬼達を斬り倒し、「もっと腕を磨け」と一言残して去って行った。
次に会ったのは街中。刀を隠し忘れた私は警官に追われ、街外れへと向かって走っていた。
「こっちだ」
『えっ…』
「喋るな」
強く腕を引かれ建物の陰へと引き摺り込まれた私は、その逞しい胸に体を預けて心臓が破裂しそうになったのを今でも覚えている。
「ったく、街中歩くなら刀くらい隠せェ」
『すみません』
「こっちの道から抜けるぞ」
結愛を解放し立ち上がった男は膝についた土埃を払い、あいつらに捕まると厄介だと言って結愛に背を向け歩き出す。
『あの』
「あ?」
『お名前、聞いてもいいですか』
「不死川実弥」
血走った目に傷だらけの体。見た目こそ強面だが、その中に隠れた優しさに結愛は惹かれていった。
……ーーー
実弥への恋心を自覚した結愛は、少しでも彼に追い付きたいと日々鍛錬に励んだ。
しかし結愛の恋心は程なくして打ち砕かれる事となる。
「少し休憩にしましょう」
『はい』
それは結愛が師範であるカナエと蝶屋敷で手合わせをしていた時の事だった。
偶然にも傷の手当てに訪れていた実弥が結愛の視界に入り、結愛の心臓がトクンと跳ねる。
「あ、不死川くん!」
結愛より早く声を上げたカナエは笑顔で手を振りながら実弥にかけより、それに気付いた実弥もその場で足を止める。
「また怪我したの?無茶はダメよ」
「うるせェ」
『っ…』
女のカンとは厄介なものだ。カナエから顔を逸らす実弥の表情を見た結愛は、彼がカナエに特別な感情を抱いているのだと気付いてしまった。
「紹介するわね、私の継子の栗栖結愛」
実弥と目が合い、結愛は動揺しきった顔を隠すように深々とお辞儀をする。
「お前胡蝶の継子だったのかァ」
『はい、先日はお世話になりました』
「二人とも知り合い?」
「任務で何度か顔を合わせただけだァ」
「へぇ、二人が顔を合わせてたなんて知らなかったわ」
すぐ側で会話をしているはずの二人がずっと遠くにいるように感じる。
「結愛は本当の妹みたいな存在だから、意地悪しないでね」
「してねェよ」
想いを伝える前に、私の初恋は粉々に砕け散ってしまった。
それでも私は、いつかその背中に追いつきたいと今日も刀を振り続ける。
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