『不死川さんは人を食べない鬼に会った事はありますか?』
「そんな鬼いる訳ねーだろ。鬼は人を食わなきゃ生きていけねェ」
『ですよね』
愛梨は昨夜出会った禰豆子の名前は伏せて人を食べない鬼について尋ねてみるが、柱である実弥ですらそんな鬼は話にも聞いた事がないと言う。
「お前も胡蝶みたいに鬼と人が仲良くすれば良いなんて思ってんのかァ?」
『人を食べた鬼にかける情けは持ち合わせていません。ただ、もし人を食べない鬼がいるならと思って』
「俺は人を食った事があろうと無かろうと、全ての鬼の頸を斬る。鬼である以上人を食う可能性があるからな」
鬼殺隊士の中に鬼に対していい印象を持っている者などいないに等しい。愛梨は実弥だけでなく、禰豆子の事は誰にも話すまいと心に誓った。
……ーーー
『ここの定食美味しかったですね』
「だろォ。食い終わったならさっさと出るぞ」
実弥はデザートにおはぎが付いてくるのが素晴らしいと褒めちぎりながら立ち上がる。
愛梨は机の上にあった伝票が無くなっている事に気が付き、落としてしまったかと足元を探す。
「金なら払ったぞ」
『え?』
愛梨は急いでブーツを履くと、ポケットに手を入れ歩き出す実弥を慌てて追いかけ問い詰める。
『いつ払ったんですか!?』
「お前が廁へ行った時」
『私の分払います!』
愛梨が懐から財布を取り出すと実弥は足を止めて振り返り、愛梨の顔の高さまで身を屈める。
「年下の女に金出させる訳ねーだろォ」
実弥は黙って奢られろと言うと再び歩き出し、実弥の言動に胸をときめかせた愛梨は頬を緩ませて実弥の後ろに続いた。
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