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‖チェス

「人を罪人のように決めつけるのはやめて下さい。
ロウランド家の名誉などあたしたちにとってはどうでもいいことです」

真っ直ぐにわたしを見つめる揺るぎ無い琥珀色の瞳
金色に燃えるような赤味のかかった髪を持つ少女
その少女の姿が頭に灼き付いて離れられない…

カタッ

「おやおや,ユーシス君何か考え事かい?次は君の番だよ」
「あ,ああ…」

友人の肩にかかる長い髪がサラサラと音を立て不思議そうにわたしの顔を見る

「…あの時の少女かい?」
「え?」

ロットの思いがけない言葉に
持っていたチェスの駒が地面に落ちる
「当たり…か」
「どうして」
「今までどんなに美しい貴婦人を見ても動じなかった君が
あの少女の前で一瞬だけ心揺らいだだろう?…だからかなと思って」
「…」
「ほらほら,白状しなさい。」
「そんな事…」
そんな事等無い…
「ユーシス君?」
「外の空気を吸ってくる」
わたしは椅子から立ち上がりその場を離れた

揺るぎ無い瞳
赤みのかかった髪を持つ
ーフィリエル・ディー

もう一度
逢いたいと
どうして想うのか
もう一度
あの娘の顔を真正面から見て話したいと
どうして思うのか…



その気持ちの答えは未だに分からない…



ぱたぱた…
「お兄様!!」
義妹があわだたしくわたしの元へ駆け寄る
何か嫌な予感がした
「どうした。何があったのか」
「あの,わたくし乗馬をしていて…そしたら木の陰からあの時の人が…フィリエルが」

ドクン…

「フィリエルがどうかしたのか」
彼女は一呼吸しゆっくりと話す
「大切な方がいなくなって…それでわたくし達の元へ救いを求めに来たのです
…その姿があまりにも哀れで
わたくし…わたくし…」
「…そうか
今からフィリエルの元へ行く
案内してくれ」
「はい」

ーフィリエル…

先程まで逢いたいと想っていた娘
心臓が早鐘に変わる
「…無事で居てくれ」
あの娘の泣き顔は見たくない
あの娘に傷をつけてはいけない


わたしは足早にその少女の元へ向かった



†ユーシス・ロウランド†




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