小説 | ナノ




‖少年

「阿高には想い人、いないのか?」

おれの隣で藤太がふいに尋ねた。

「…想い人?」

「そう。自分から愛しいと想う人だよ。」

遠くから鳥の鳴き声が聞こえる

「阿高?」

言葉が
出なかった

…想う?
愛しい?
何を
どう想うんだ



どくん…



「あ、阿…」



「今夜、寝る処を探してくる」



木がざわざわと音を立てて
俺の黒い鬣を
容赦なく揺らす



想う?
…おれは人を恋しいとは想わない
むしろ
こんなもののけを
愛してくれる人等



…いない



かさっ



人の気配がした

それと

人ではない
もう一つの気配がした

おれはかつかつと蹄の音を立てて
気配のする元へ走った


木を分け入ると
そこに人が居た

貴族の身なりをした少年…



知らず知らずの内にその少年をおれの背中に乗せた。
何故助けたのか…
何故見過ごせなかったのか…



自分自身も分からない…





ー少年の名は
鈴鹿丸という…



†阿高†




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